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日外会誌. 89(3): 452-457, 1988


原著

抗血栓性小口径自家結合織人工血管の開発

京都府立医科大学 第2外科
*) 岡山大学 リハビリテーション外科

佐藤 伸一 , 白方 秀二 , 岡 隆宏 , 野一色 泰晴*)

(昭和62年4月27日受付)

I.内容要旨
我々は良好な治癒過程が得られる結合織管を利用して小口径人工血管の開発を進めている.まず,支持素材としては,十分な結合織の生育と密着が達成されるように超極細ポリエステル繊維からなるporosity 3650, 口径3mmのtubeを作り, silicone rodを内腔に入れ, これを雑種成犬4頭の皮下に3週間埋没することによつて結合織管を得た.これに抗血栓性を賦与するために架橋剤を用いてその内表層のみをヘパリン化処理した.処理した長さ5~6cmの結合織管で自家両側頸動脈を分節置換した.術中,術後は抗凝固療法を施行せず,経時的に移植人工血管を摘出し,組織学的に検討を行った.その結果, 6日目に死亡したものの片側が閉塞していたが,残りの3頭, 6本はそれぞれ44日目, 50日目, 55日目,すべて開存し,開存率は88%であった. 44日目の結合織管の組織像は,全長にわたり筋層も形成され,中央のごく一部を除いて全面が内皮細胞で覆われ,新生内膜が完成されていた. 55日目のものは,新生した細血管の開口部も多く認められ,安定した治癒像を呈し, さらに長期の開存を期待させた.この超極細繊維を人工支持材料とし,抗血栓性を賦与したハイブリッド型結合織管は小口径人工血管として将来,臨床応用も可能であるとおもわれる.

キーワード
結合織管, 小口径人工血管, 超極細繊維, 架橋剤, 抗血栓性

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