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日外会誌. 89(3): 388-393, 1988


原著

ヒト胆嚢粘膜上皮の器官培養に関する実験的研究
ヌードマウス皮下移植を利用した長期間維持例の報告

群馬大学 医学部第1外科学教室
*) 群馬大学 医学部衛生学教室

奥村 宏康 , 坂本 孝作 , 中野 眼一 , 池田 均 , 長嶋 起久雄 , 長町 幸雄 , 湯浅 保仁*)

(昭和62年4月14日受付)

I.内容要旨
近年,臓器,組織を用いたin vitroでの器官培養法に関する報告がみられるがヒト胆囊を対象とした器官培養の報告はない.著者らはヒト胆囊を対象とした発癌実験を目的としてin vitro器官培養を行つているがin vitro器官培養のみでは長期間にわたる組織の維持は難しい.今回,この培養とヌードマウス皮下移植をくみあわせることによりヒト胆囊粘膜を長期間維持することに成功した.対象組織は手術的に摘出された胆囊8例でin vitro器官培養後ヌードマウスの皮下に移植し,培養組織,移植組織内の粘膜上皮を組織学的に観察した.今回の報告例はこの中の最長維持例で,2週間のin vitro器官培養後,27週間のヌードマウス皮下移植に成功した例である.本例の組織学的変化を検討し以下の結果を得た. 
in vitro器官培養では組織片全体を囲むように増殖,延長した扁平な上皮細胞が認められたが,時間の経過とともに円柱上皮に分化する部分が観察された.
移植組織では上皮細胞が囊胞を形成するように生着していた.4週後の組織では立方上皮からなりたっていたが24週後は円柱上皮が主体となり,これらの細胞質内にsulfomucin含有の顆粒を認めた.27週後の組織では立方上皮と円柱上皮が混在していた.
以上よりこの方法はヒト胆囊上皮の長期間にわたる維持および観察が可能で,ヒト臓器を対象とした実験的発癌研究に応用しうる有用な方法である.

キーワード
ヒト胆囊, 器官培養, ヌードマウス, xenotransplantation

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