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日外会誌. 89(3): 345-351, 1988


原著

絞扼性イレウスの診断と手術時期に関する検討
―特に超音波検査法の有用性を中心として―

神戸市立中央市民病院 外科

小縣 正明 , 橋本 隆 , 徳家 敦夫 , 小西 豊 , 佐藤 守 , 石川 稔晃 , 黒木 輝夫

(昭和62年4月27日受付)

I.内容要旨
絞扼性イレウスの診断と手術時期の決定に関する超音波検査法(US)の有用性について検討した.1981年7月から1986年8月までに当院で手術を行った絞扼性イレウス58例を対象とし, US施行群25例とUS非施行群33例の2群について,臨床所見,検査所見,術前診断,治療成績などを比較検討した.
臨床所見や血液•X 線検査所見には絞扼性イレウスを示唆する特異性が少ないが, US では絞扼性イレウスの基本的所見として下記の所見が得られる.
(1)絞扼された腸管は,腸蠕動や腸内容の浮動性が減弱・停止した拡張腸管として限局的に描出される.
(2)絞扼部の口側の拡張腸管では,腸蠕動や腸内容のto-and-fro movementが認められる.
(3)多くの場合に,腹腔内貯留液を描出し,腸管の拡張程度は強い.
絞扼性イレウスの超音波診断においては,(1) と(2)の異なった二つの病態を捉えることと経時的検査により急速なイレウス像の増悪を確認することが重要である.
術前正診率は, US非施行群42%(疑診例を含む)に対して, US施行群では92%に向上した.受診から手術までの経過観察時間もUS施行群において著しく短縮した.その結果,腸壊死のために腸切除を必要とした症例はUS非施行群52%に対して, US施行群では24%に減少した.特に超音波診断に基づく緊急手術例17例に限ると,初回検査から平均5.0時間で手術を施行できており,腸切除例は2例(12%)のみであった.
腸壊死に陥る前に手術を行うための指標としては,従来述べられてきたショックや腹膜刺激症状,白血球数増加,単純X線所見におけるgas-minus ileusやpseudotumor signなどは適切ではなく,超音波診断が有用であった.

キーワード
絞扼性イレウス, 超音波検査法, 手術適応

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