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日外会誌. 89(3): 325-335, 1988


原著

食道静脈瘤に対する直逹手術術後の高カロリー輸液
―とくに脂肪乳剤の併用について―

大阪市立大学 医学部第1外科

高井 敏昭 , 長山 正義 , 奥野 匡宥 , 池原 照幸 , 阪本 一次 , 李 在都 , 梅山 馨

(昭和62年4月20日受付)

I.内容要旨
肝障害をともなう食道静脈瘤の経腹的直達手術症例を対象とし,肝障害患者の術後高カロリー輸液に脂肪乳剤を併用することの意義について検討した.対象症例を術後高カロリー輸液における脂肪乳剤併用の有無により脂肪群(28例),非脂肪群(40例)の2群に分け,術後高カロリー輸液期間中の肝機能検査成績,血糖値,経静脈的脂肪負荷試験成績,血清脂質値,血清総脂肪酸構成,窒素出納値,体重の変動等について両群を比較した.
その結果,肝障害患者の術後高カロリー輸液期間中の脂肪乳剤の併用は,肝機能を悪化させることなく,血糖値をやや低く維持しうるとともに,血清総脂肪酸構成の異常を是正しうる成績を示した.その際,必須脂肪酸であるC18:2(リノール酸)の減少を防止するためには, 10%脂肪乳剤5ml/kg/日以上を投与する必要性が示唆された.
一方,負荷脂肪の血漿消失率K2値は,肝障害患者の術後高カロリー輸液期間中では術前値に比べて有意に高値を示し,血清脂質値の変動からも投与した脂肪が血液中に停滞する傾向はみられなかった.また,術後TPN期間中の累積窒素出納の成績や体重の変動からも,経静脈的に投与された脂肪乳剤はエネルギー源として利用されるものと推察され,肝障害患者に対する術後高カロリー輸液期間中の脂肪乳剤の併用は有用であると考えられた.

キーワード
肝障害患者, 高カロリー輸液, 脂肪乳剤, 経静脈的脂肪負荷試験, 血清総脂肪酸構成


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