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日外会誌. 89(2): 270-281, 1988


原著

術後深部静脈血栓症に関する研究
―とくに予防について―

岐阜大学 医学部第1外科(指導:稲田 潔名誉教授)(指導:広瀕光男助教授)

小池 茂文

(昭和62年3月19日受付)

I.内容要旨
間欠的下肢圧迫法(以下ISPC)による術後深部静脈血栓症(以下術後DVT)の予防について検討した.対象は当科入院の消化器手術患者で,良性疾患16名と悪性疾患27名について,術前後の血小板数, prothrombin time (以下PT), activated partial thromboplastin time (以下APTT), thrombo test, normo test, fibrinogen, plasminogen, ユーグロブリン溶解時間(以下ELT), FPBβ15-42を測定し対照群とした.一方,良性疾患6名と悪性疾患29名について,麻酔導入前より術後第2病日までの48時間にわたりKendall社製intermittent sequential compression device Model 5315を用い両下肢を間欠的に圧迫し,前述の検査を施行した.良性疾患,悪性疾患それぞれについて,圧迫群と対
照群の結果を比較検討した.さらにISPCを行った悪性疾患々者64名については125I-fibrinogen uptake test (FUT)を行い,本法による術後DVTの予防効果についても検討した.
1) 術後DVTの発生率は対照群161例中29例(18.0%)であるのに対して,圧迫群では64例中4例(6.3%)と有意の低下を示した(p<0.01).また圧迫群では術後DVTの発生時期が遅延した.
2) 圧迫群の第1病日ELTは対照群に比較して有意の短縮を認め, ISPCによる線溶能の亢進が認められた.
3) 圧迫群のnormo test, plasminogenは対照群に比し術後第1病日に低下した数値が正常値に早く復帰する傾向を認めた.
4) 血小板数, PT, APTT, thrombo test, fibrinogenでは良性群,悪性群ともに圧迫の有無による差異は認められなかった.
5) ISPC 2日間の施行は,graded compression stocking 7日間の着用と同等の術後DVT予防効果を認めた.
以上より, ISPCは静脈血流のうつ滞を防止するのみならず,線溶活性物質の放出を惹起し,術後DVTの発生を有意に減少させた.

キーワード
術後深部静脈血栓症 (術後DVT), 間欠的下肢圧迫法 (intermittent sequential pneumatic legcompression; ISPC), 125l-fibrinogen uptake test (FUT),, ユーグロブリン溶解時間 (ELT), Fibrinopeptide Bβ15-42

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