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日外会誌. 89(2): 265-269, 1988


原著

高位腹部大動脈閉塞症手術例の検討

岡山大学 医学部第2外科

栗原 英樹 , 草井 孝志 , 諸国 眞太郎 , 妹尾 雅明 , 清水 康廣 , 内田 發三 , 寺本 滋

(昭和62年3月28日受付)

I.内容要旨
当科において昭和42年から昭和61年までの19年間に経験した高位腹部大動脈閉塞症21例を検討した.手術例は17例で全例男性であった.年齢は39歳から78歳にわたり平均61.0歳であった.非手術例は4例で男性3例,女性1例であった.全例に下肢の虚血症状をみとめたが,うち安静時痛は11例に,間歇性跛行は9例にみられた.また陰萎は8例にみられた.血栓の腎動脈進展は1例に見られ,腎血管性高血圧症を呈していた.併存疾患としては高血圧症と虚血性心疾患が各々12例に,脳血管障害は1例に,糖尿病は3例にみとめられた.
手術方法では解剖学的経路での血行再建を基本とし, Y型人工血管による腹部大動脈から総大腿動脈へのバイパスを6例に, V型人工血管によるバイパスを3例に行った.非解剖学的経路の腋窩大腿動脈バイパスは4例に行い,大腿切断は1例に行った.早期手術成績では, 17例中3例(18%)が病院死した.遠隔期では2例が追跡不能であり,残る12例中2例が死亡したがいずれも手術との関連は無かった.
本症の手術後の予後は良好であり, Y型ないしはV型Dacron人工血管を用いた解剖学的経路での血行再建が望ましく,非解剖学的経路での血行再建はpoor risk症例にのみ適応があると考えられる.

キーワード
高位腹部大動脈閉塞症, Juxtarenal aortic occlusion, Leriche 症候群


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