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日外会誌. 89(2): 245-250, 1988


原著

再構築ラ島一neoislet の同種移植

東北大学 医学部第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

柿崎 健二 , 松野 正紀 , 宮川 菊雄 , 中村 隆司

(昭和62年3月23日受付)

I.内容要旨
膵ランゲルハンス氏島(以下,ラ島)を分散し単個細胞とし,これを旋回培養すると,細胞は互いに接着し新たな凝集塊を形成する.細胞凝集は細胞問の認識により胎生由来を同じにする細胞間で特異的に起こると言われ,凝集塊は膵内分泌細胞より構成され,拒絶を引き起こすのに必要なpassenger lymphocyteなどのIa抗原陽性細胞は凝集塊より除去される可能性がある.事実,この再凝集ラ島(以下,neoisletとする)は同種リンパ球との混合培養で, リンパ球幼若化能が非常に低いと言われる.本研究では,ラ島よりIa陽性細胞を除去することにより拒絶反応を抑制する一方法として,再構築ラ島―neoisletの同種移植を試みた.Lewis(RT1)ラットよりラ島を分離し,一部は5日間培養後(Group1, 2),一部はneoisletを(Group3, 4), streptozotocin糖尿病ACI(RTa)ラットに経門脈性に移植した.また, neoisletの同系移植も試みた(Group5). Group 2, 4ではcyclosporine(CsA) 30mg/kg/dayを3日間,皮下注した.
本来のラ島を5日間培養後に移植すると,平均8.7日で再び高血糖(>200mg/dl)となり, ラ島は拒絶されたものと思われた.neoislet同系移植により移植ラットは正常血糖となり,neoislet移植は有効と考えられた.さらに,neoisletの同種移植では,著しい生着延長が得られ(平均46.3日以上),7匹中5匹では60日の観察期間中拒絶を認めなかった.CsAを投与すると,本来のラ島移植では50%で60日以上(平均45.8日以上),neoislet移植では全例で60日以上の長期生着が認められた.
以上の如くneoislet移植では本来のラ島移植に比べ著しい生着延長が得られ,CsA非投与群では71%で, 3日間CsAを投与した群では100%で拒絶が認められず,再構築ラ島一neoilsetは新たなimmunoalterationの一方法として,有用と考えられた.

キーワード
膵ランゲルハンス氏島同種移植, 細胞凝集, Neoislet, Immunoalteration, Cyclosporin A

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