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日外会誌. 89(2): 192-199, 1988


原著

血中 Immunosuppressive Substance の大腸癌腫瘍マーカーとしての意義に関する臨床的研究

三重大学 医学部第2外科(主任:鈴木宏志教授)

松本 収生

(昭和62年4月8日受付)

I.内容要旨
Immunosuppressive Substance (IS物質)の大腸癌における腫瘍マーカーとしての意義を明らかにする目的で,大腸癌患者95例,良性消化器疾患患者61例,健常人32例の血中IS物質を測定した.これらの症例のうち大腸癌患者79例,良性消化器疾患患者53例については血中Carcinoembryonic antigen(CEA)をも測定した.健常人の血中IS物質は549.7±104.7μg/mlであり,陽性率をみるにあたつてcut off値はそのmean+2SDより800μg/mlとし,血中CEAのcut off値は2.5ng/mlとした.
大腸癌患者の血中IS物質は平均969.4±432.7μg/mlと健常人に比して有意な高値を示したが,その陽性率は57.9%にとどまり,これを大腸癌のスクリーニングに用いることは不適当と考えられた.しかし, CEAとのcombination assayによる大腸癌の診断率は75%と向上した.非治癒切除あるいは非切除症例では治癒切除症例に比して血中IS物質の平均値が有意に高く,両者の判別にあたつて治癒切除が期待される血中IS物質のcut off値を1,100μg/mlとするとき, 78.9%のaccuracyを示した.
血中IS物質の上昇と病理学的因子との関連を多変量解析によつて検討すると,血中IS物質の上昇には他臓器浸潤,腹膜播種,広範なリンパ節転移が大きく関与し,肝転移は関与しなかった. retrospectiveにみると,術前の血中IS物質値による腹膜播種,広範なリンパ節転移,他臓器浸潤の有無についての判別は88.4%の症例で的中した.血中CEA値は肝転移で大きく上昇するが,腹膜播種,広範なリンパ節転移あるいは他臓器浸潤では大きな変動を示さなかったことから,血中IS物質はCEAを補完する大腸癌腫揚マーカーとして重要な意義をもつことが知られた.

キーワード
IS物質, CEA, 大腸癌, 腫瘍マーカー


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