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日外会誌. 89(2): 173-180, 1988


原著

再発様式からみた胃癌外科治療の問題点
―特に治癒切除例について―

東京医科歯科大学 医学部第1外科

竹下 公矢 , 羽生 丕 , 砂川 正勝 , 斉藤 直也 , 佐藤 康 , 遠藤 光夫

(昭和62年4月7日受付)

I.内容要旨
過去13年間に切除された初発胃癌治癒手術例675例のうち,再発死亡した113例を対象として,術後5年以上生存を確認した治癒切除症例145例と臨床病理学的に比較検討した.続いて再発死亡例について,剖検例11例を含めて再発形式や治療法を重点に検討を加えた結果,以下の事項が明らかになった.
1) 生存例に比較して,再発例では組織学的stageIII, 肉眼型が3~4型,占居部位が胃上部もしくは全領域癌の長径が5cm以上, ps(+), n2(+)の症例が多かった.漿膜浸潤陽性例ではその部分の最大径が2cm以上でINFγのものが多数を占めた.また, stageIII症例の中ではs因子の方がn因子よりも進んだ症例が多かった.
2) 再発形式については, ps(-)例では分化型で肝,遠隔転移が多く, ps(+)例では低分化型で局所,腹膜再発を示すものが多かつた.
3) 癌の肉眼型,占居部位,組織型, n因子,脈管侵襲の有無と再発形式の間には一定の傾向は認められなかつた.
4) 再発形式別では局所,腹膜再発例がもつとも高頻度であった.局所再発による黄疸例では減黄を目的とした再手術が有効な場合があるが,腹膜再発例では再手術による延命効果はほとんどなかつた.肉眼的S1症例の多くがps(+)であったことから, S(+)と判定された症例には術中からの積極的な制癌剤腹腔内投与などが考慮されるべきである.
5) リンパ節再発は剖検時に初めて発見されることが多く,他の再発巣からの2次的なリンパ節転移の可能性も否定できない.
6) 肝もしくは遠隔臓器転移による再発例は,再手術の適応は少ないが,他の再発例に比べて術後生存期間は長く,補助化学療法による延命効果が期待される.
7) 治癒切除術後の再発胃癌の治療成績を向上させるためには,今後再発形式に応じた手術療法の拡大や,補助化学療法などを合理的に組み合わせた集学的治療法の確立が必要である.

キーワード
胃癌, 胃癌の再発, 胃癌の治癒切除, 胃癌の腹膜再発, 胃癌の血行転移

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