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日外会誌. 89(1): 128-132, 1988


症例報告

Hemosuccus pancreaticus を来した真性多発性脾動脈瘤の 1例

浜松赤十字病院 外科
*) 浜松医科大学 第2外科

松本 隆博 , 阪口 周吉*) , 住山 正男 , 深見 博也

(昭和61年12月20日受付)

I.内容要旨
吐血を主訴として来院した65歳の女性に緊急内視鏡検査を施行し, Vater乳頭より出血(Hemosuccus pancreaticus)を観察した症例を経験した.原因疾患は,超音波検査でcysticpatternのtumor, CT検査ではenhanceで大動脈とisodensityに描出されるtumorとして認められた.腹部血管造影では,上腸間膜動脈の第1分枝として分岐した脾動脈本幹に動脈瘤が4個認められ,その内,脾動脈分岐部から5mm末梢に発生した60×45mmの最大の動脈瘤が膵実質内に破裂し,膵管を通じて消化管内に出血したものと考えられた.手術は動脈瘤部分切除,脾摘,合併した胆嚢結石のために胆摘を施行した,病理組織学的にはarteriosclerosisの著明な真性動脈瘤であった.Hemosuccus pancreaticusは極めて稀な状態で,本邦では26例,国外では22例が報告されているに過ぎない.これらの文献を検討し,病因,病態生理,診断,手術術式等につき考察を加え報告する.

キーワード
Hemosuccus pancreaticus, 脾動脈瘤, 吐血


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