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日外会誌. 89(1): 109-115, 1988


原著

小口径 Expanded polytetrafluoroethylene graft 使用例の晩期閉塞例の検討

京都府立医科大学 第2外科
*) 洛和会丸太町病院 

佐藤 伸一 , 西山 勝彦 , 白方 秀二 , 大賀 興一 , 岡 隆宏 , 門脇 政治*) , 矢野 一郎*)

(昭和62年3月11日受付)

I.内容要旨
小口径expanded polytetrafluoroethylene graft (E-PTFE)は, 自家静脈につぐ第2次選択人工血管として近年,末梢血行再建術に多用されている.我々の施設でも昭和54年から38例48肢の慢性動脈閉塞症の症例に対して口径6mmのE-PTFE graftを使用し,femoro-popliteal bypassを施行した.しかし, これらの累積開存率は, 36カ月で40.8%, 平均開存月数は26.3カ月と決して滴足しうるものではなかった.その原因を追求する目的で3例の閉塞例, または狭窄例で再手術の際,移植血管を摘出し,形態学的に検討した.その結果, E-PTFE graftは抗血栓性を有し,短期間では高開存率を示すが,晩期においては,抗血栓性を賦与する内皮細胞がgraft内面を全長にわたつて覆うことはなく,吻合部より人工血管内へとpannusが形成され,その表面にのみ内皮細胞は育生することがわかった.これらの晩期閉塞はそのpannusが原因で人工血管の狭窄ないし,閉塞を来したと思われた.以上よりE-PTFE graftは,あくまで第2次選択人工血管であり,これを使用する場合,より大きな口径をもつものを使用すべきでありかつ,術後は抗凝固療法が必要であると考えられる.

キーワード
pannus, expanded polytetrafluoroethylene, 内皮細胞, 抗血栓性, fibril length

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