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日外会誌. 89(1): 91-102, 1988


原著

ヌードマウス可移植性ヒト乳癌株を用いた実験的化学・内分泌療法に関する研究

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

洪 淳一

(昭和62年3月5日受付)

I.内容要旨
ヌードマウス可移植性ヒト乳癌株4株を用いて実験的化学療法および化学・内分泌療法をおこないその抗腫瘍効果を検討した.用いた乳癌株はホルモン依存性株3株(MCF-7, Br-10, TM-61)とホルモン非依存性株1株(MX-1)である.化学療法としてmitomycin C (MMC) 3mg/kg, adriamycin (ADM) 4mg/kg, cyclophosphamide (CPM) 80mg/kg, 5-fluorouracil (5-FU) 50mg/kgを各々3回投与した.化学・内分泌療法としてホルモン依存性株ではMMC 2mg/kg 1回投与後tamoxifen (TAM) 5mg/kgを4~9回投与し,ホルモン非依存性株ではMMC 1mg/kgとTAMを併用した.効果判定はBattelle Memorial Institute Protocolに準じTRW/CRW42%以下を有効とした.また腫瘍のエストロゲンレセプター(ER)をDextran Coated Charcoal (D.C.C.)法により測定した.化学療法では4株に対し最も強い抗腫瘍効果を示したのはMMCでついでCPM,ADMの順であった.化学・内分泌療法においてはホルモン依存性株3株ではMMC,TAM各々単独よりは両者を併用した方がより強い抗腫瘍効果が見られたが,ホルモン非依存性株では明らかな併用効果は見られなかった.併用効果が示された3株についてはMMC用最依存直線よりTAMを併用することによりMMCの量を半量以下に減少させうることが示めされた.またBr-10を用いてMMC投与後の腫瘍のERを測定したが, MMC投与によるERの結合部位数の減少は見られずMMC投与後でもTAMはその効果を発揮しうるものと考えられた.
以上の成績より化学・内分泌療法は訓作用の分散および抗腫瘍効果の向上という点から臨床上乳癌に対する有用な治療法と考えられた.

キーワード
ヌードマウス, ヒト乳癌, ホルモン依存性, 化学・内分泌療法

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