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日外会誌. 89(1): 84-90, 1988


原著

早期乳癌の定義に関する検討

1) 帝京大学 医学部第1外科
2) 平塚市民病院 外科

浅越 辰男1) , 箭本 浩1) , 根本 明久1) , 高田 忠敬1) , 四方 淳一1) , 青木 明人2) , 中山 隆市2)

(昭和62年2月3日受付)

I.内容要旨
最近8年4カ月間の原発乳癌症例195例中の非浸潤癌と腫瘍径2cm以内(T0, T1) の症例54例(28%),および最近16年5カ月間に施行した乳癌根治手術例280例中の再発症例50例(18%)を検索対象として,早期乳癌early breast cancerの定義付けを,診断と治療・予後の観点より試みた.その結果,
1) ①非浸潤癌12例(22%),②腫瘤を触知しないT0乳癌4例(8%),③腫瘍径10mm以内の浸潤癌11例(20%), ④ 11から20mmの浸潤癌27例(50%) の4群に分類して検討した.2)非浸潤癌は12例で,全体の6.2%と諸家の報告より高頻度で,いずれもリンパ節転移陰性(n0), その所見は,①血性乳頭分泌,②マンモグラフィー上の微細石灰化,③襄胞内腫瘤,④腫瘍径5から10mmの充実性腫瘤の4群に分類できた.3) 生検率の比較より,診断面で腫瘍径10mmに境界を設けることの意義は認められなかった. 4) T0,T1のリンパ節転移陽性(n+)症例は,いずれも16mm以上の症例であった.5)再発50例中,2cm以内は3例(6%, T0: 1, T1: 2),n0は8例(16%)であった.6) 2cm以内の再発症例は, T0n1β例を除けば,16mm以上,n+症例で, T1n0の再発例はなかった.7) n0の再発症例は,全例長径21mm以上(T2以上)で,充実腺管癌症例が7/8 (88%)を占めた.8) n0群の10年累積生存曲線はn+群より有意に高かつた(p<0.0001).9)早期乳癌の条件は, high curabilityであること,頻度がまれでないことが必要で,その定義は診断と治療の両者に役立つことが肝要と考えられる.そこで,自験例の限りでは,①非浸潤癌と15mm以内の浸潤癌でT0n+例は除く,あるいは,②非浸潤癌と腫瘍径20mm以内でn0(T0n0, T1n0)の浸澗癌を早期乳癌と定義すべきであると考えられた.

キーワード
早期乳癌, 非浸潤癌, 2cm 以内乳癌, リンパ節転移, 定義

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