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日外会誌. 89(1): 63-71, 1988


原著

十二指腸乳頭部病変の実験的研究
―とくに胆道内圧測定による乳頭不全の実験的検討―

東北大学 医学部第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

伊勢 秀雄 , 高橋 渉 , 釼持 俊明 , 鈴木 範美

(昭和61年5月7日受付)

I.内容要旨
良性胆道疾患の乳頭部病変の補助的診断法として実施している定流灌流式胆道内圧測定により,乳頭部病変は狭義の乳頭狭窄と乳頭不全に区別される.しかし,両病変の病態における異同については不明な部分が多いので,胆管拡張犬を用いて乳頭部病変の解析を試みた.
10~20kgの雑種成犬10頭を用いた.全麻下に胆摘し,胆道内圧を測定し,直接胆道造影を施行後に,経十二指腸的に乳頭部およびその近傍の十二指腸壁に10%フォルマリン液を0.5~1.0ml注入し,1週目(n=9),2週目(n=8),4週目(n=6),9週目(n=5),13週目(n=4),1年目(n=3)に,それぞれ胆道内圧測定,直接胆道造影を施行した.その結果, 1) 胆道造影上の最大径を肝外胆管径としたが,術前は4.4mm,1週目は15.0mm, 2週目には18.7mmと最も拡張し, 4週目は16.4mm,9週目は15.6mm,13週目は15.0mmと経時的に縮小を示したけれども,1年目でも8.8mmと拡張し,また,胆道造影像上,胆管末端部はU字状途絶様の像を呈した.2) 胆道内圧は,1週目では溜流量0.8ml/minにて減衰時間が17.4秒と術前に比し有意に短縮し(p<0. 05),2週目でも濯流量0.2ml/minでは減衰時間は12.0秒, 0.4ml/minでも12.5秒と有意に短縮していた(p<0.05).4週目以降でも同様に減衰時間は10秒前後と低値を示していた.胆道内圧波型は,瀧流圧が一定で,減衰時間の短縮を認める乳頭不全型波形を呈した.3)摘出標本では,乳頭部は術前とは逆に陥凹として認められた.また,乳頭開口部は4mmの消息子が乳頭開口部から胆管内へ抵抗なく通過した.このような知見は,人間でみられる乳頭不全の病態によく類似したものであった.

キーワード
乳頭不全, 乳頭狭窄, 慢性胆管拡張犬, 胆道内圧測定, 乳頭括約筋形成術

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