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書誌情報]
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日外会誌. 89(1): 55-62, 1988
原著
PTP 像からみた肝内門脈枝の分岐形態とそれに基づいた肝区域の検討
I.内容要旨肝・胆道・膵疾患237症例に行われた経皮経肝門脈造影像をもとに門脈の分岐形態と分岐次数を検討し,肝区域の設定を試みた.門脈左右枝を第一次分枝とし,その末梢枝を分岐順に第二次,第三次,第四次分枝としたが, 2分岐型を呈さない門脈枝を共通幹として取扱つた.また第一次,第二次,第三次および第四次分枝の灌流領域をそれぞれ肝葉,区域,亜区域,小亜区域とし,以下の成績を得た.
1. 肝門部の門脈分岐形態は正常分岐型226例中168例74.3%, 3分岐型47例20.8%,右後枝独立分岐型11例4.9%に分類された.左右の尾状葉枝(第二次分枝)はそれぞれ左右の第一次分枝より分岐するが, 3分岐型や右後枝独立分岐型の右尾状葉枝は右後枝より分岐する.また門脈幹より分岐する左尾状葉枝が8例で観察された.
2. 左第一次分枝は左外側背側枝(第二次分枝)を分岐したのち門脈𦜝部(第三次共通幹)となり,盲管に終るが,門脈𦜝部から多数の内側枝(第四次分枝,平均5.4本)と左外側腹側枝(第三次分枝)が分岐する.したがつて左外側背側枝の灌流する領域が左後区域,その他が左前区域に相当する.また内側域は多数の小亜区域から構成されていると考えられた.
3. 右前枝の2分岐型は222例中61例27.5%にすぎず,他の161例は多様な分岐形態を呈した.しかし前枝の第四次分枝は常に4~5本存在した.したがつて前区域は上下の亜区域にわけるよりも4~5個の小亜区域にわけるべきである.また後枝も2分岐型は少なく,他の多くは太い幹から次々に4~5本の分枝を出しているため,後区城も前区域と同様に上下にわけるよりも, 4~5個の小亜区域にわけることが,小型肝癌の系統的亜区域切除にとつて合理的であると考えられた.
キーワード
経皮経肝門脈造影像, 門脈枝の分岐形態, 肝区域, 肝切除
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