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日外会誌. 89(1): 39-44, 1988


原著

肝再生時における再生肝内腫瘍増殖に関する実験的研究

熊本大学 医学部第1外科(指導:宮内好正教授)

田中 道宣

(昭和61年7月7日受付)

I.内容要旨
肝切除後の肝再生が残存肝に存在する腫瘍に及ぽす影響をみる目的で,白色家兎の肝にVX2癌細胞浮遊液を移植して肝がんを作成し再生肝内の腫瘍増殖に関する実験的研究を行なつた.
白色家兎の肝の左前葉と左後葉を切除したとき,全肝重量に対する切除率は40%であつた.40%肝切除と同時に残存肝にVX2癌細胞浮遊液を移植したとき,肝切除後14日目の腫瘍容積は,肝切除群1553.2±845.8mm3,対照群474.2±375.9mm3で肝切除群が有意に増加していた(p<0.01).
次に肝にVX2癌細胞浮遊液移植後14日目に40%肝切除を行なったとき,残存肝内の癌部のmitotic indexは肝切除後24時間目11.7±3.3,36時間目12.0±2.0,対照群は24時間目7.4±1.9,36時間目6.8±1.8で肝切除群が有意に増加していた(p<0.02).非癌部のmitotic indexは肝切除群では肝切除後24時間目1.9±0.7,36時間目1.4±0.9,48時間目2.5±1.5,対照群では24時間目0.5±0.5,36時間目0.2±0.4,48時間目0.6±0.6でありそれぞれの時間において肝切除群のmitotic indexは有意に増加していた(24時間目p<0.005,36時間目p<0.01,48時間目p<0.005).DNA合成能(cpm/μgDNA)をみると,癌部は肝切除後36時間目には肝切除群60.4±4.0,対照群50.2±6.8で肝切除群が有意な増加を示した(p<0.05).
以上の結果より40%肝切除と同時にVX2癌を残存肝に移植したとき腫瘍の発育は促進された.また肝にVX2癌移植後14日目に40%肝切除を行なったとき,残存肝の癌部のmitotic indexと非癌部のmitotic indexとは一致した時期に有意に増加し,癌部ではDNA合成能も増加していた.つまり肝再生が旺盛な時期に一致して肝内の腫瘍増殖も増加することより肝再生によつて残存肝内の腫瘍増殖は促進されることが示唆された.

キーワード
肝癌, 腫瘍増殖, 肝切除, 肝再生

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