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日外会誌. 88(12): 1737-1742, 1987


原著

極細径ファイバースコープを用いた血管内視鏡の実験的・臨床的研究

山梨医科大学 第2外科

岩崎 甫 , 神谷 喜八郎 , 秋元 滋夫 , 高山 豊 , 松川 哲之介 , 上野 明

(昭和62年1月26日受付)

I.内容要旨
先端直径2.5mmの極細径内視鏡(オリンバスPF-25L)を用い,実験的・臨床的に血管およびグラフト内腔の観察を試み, この内視鏡の血管内視鏡としての応用の可能性につき検討した.イヌの腹部大動脈では上部で血行を遮断しても腰動脈等からの血液の逆流が多く充分な観察は困難であったが,外腸骨動脈領域では腹部大動脈と末梢側の遮断,および内視鏡鉗子口からのヘパリン生食水のフラッシュにより血管内腔や大腿深動脈との分岐部が明瞭に観察できた.この分岐部では1mm大の内膜剥離像を認めることができ,良好な視野を保つことができれば, この内視鏡によつて微細な病変も観察できることが示された.臨床例では4例のグルタールアルデハイド処理ヒト𦜝帯静脈グラフト(Dardik's Biograft)内腔の観察を試みた.いずれの症例でもバルーンによる血行遮断にて良好な視野が得られ,蛇腹状を呈する内腔像やグラフト切開部の様々な狭窄像など詳細な観察が可能であった.しかし吻合部までは内視鏡の誘導が困難な場合が多く吻合部の観察は困難であった.今回の検討結果より,この内視鏡の観察能はほぼ満足すべきものであり,血管内視鏡として用いることができると考えられたが,血管内視鏡検査の一般化のためには, さらにアングル機構や抗血栓性の付加など内視鏡自体の改良と,効果的な血液排除の方法の確立を図る必要があることが示された.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, 血管内視鏡, Dardik's Biograft, レーザー血管形成術

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