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日外会誌. 88(12): 1676-1683, 1987


原著

癌性腹膜炎患者に対するOK-432腹腔内投与による主病巣縮小効果

*) 佐賀医科大学 外科
**) 九州大学 医学部第1外科

片野 光男*) , 溝口 哲郎*) , 山本 裕士*) , 久次 武晴*) , 鳥巣 要道**)

(昭和62年2月16日受付)

I.内容要旨
癌性腹膜炎の治療法の一つである溶連菌製剤(OK-432)腹腔内投与療法が腹水減少にとどまらず症例により主病巣の縮小をももたらすことを知つた.本稿では主病巣縮小効果および効果発現の機序について検討した.
胃癌および大腸癌により腹水が貯留し,主病巣の評価が可能で,治療前に腹水中より腫瘍細胞が分離培養された16症例を対象とした.OK-432投与後腹水中よりリンパ球を分離培養し,培養上清中に出現する自己腫瘍細胞に対する増殖抑制活性をマイクロプレート法にて検討し以下の結果を得た.1)16症例中4例に4週間以上におよぶ主病巣縮小効果を認めた.2)OK-432投与前の腹水中リンパ球の培養上清は自己腫瘍細胞の増殖を抑制することはなかつたが,縮小例4例においては主病巣への効果が現われる時期と前後して腹水中より採取したリンパ球の培養上清は全例において自己腫瘍細胞の増殖を著明に抑制した.一方,非縮小例12例においては2例に軽度の増殖抑制活性を認めたにすぎなかつた.3)OK-432の腹腔内投与によつて末梢血中のリンパ球に増殖抑制活性産生を誘導することは困難であつたがin vitroにおいてOK-432と末梢血リンパ球を混合培養することによつて類似の増殖抑制活性が誘導された.4)本増殖抑制因子は腫瘍壊死因子(TNF)およびインターフェロン(IFN)とは異なる物質であることが示唆された.
以上,癌性腹膜炎患者の腹腔内へOK-432を投与することにより,症例によつては腹水中リソバ球に自己腫瘍細胞の増殖を抑制する物質が誘導され,この増殖抑制因子が本療法による主病巣縮小効果に関係していることが示唆された.

キーワード
癌性腹膜炎, OK-432, 主病巣縮小効果, 自己腫瘍細胞, 腫瘍細胞増殖抑制因子

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