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日外会誌. 88(12): 1667-1675, 1987


原著

Wound fluidの免疫学的研究

北里大学 医学部外科(指導:阿曽弘一教授)

島津 盛一

(昭和62年2月2日受付)

I.内容要旨
細胞増殖,組織新生および再生を活発に営んでいる治癒過程の創局所が免疫反応の活性化された場である事に注目し,局所の細胞性免疫および液性免疫がともにin vitroではむしろ抑制的に作用していることより,創部周囲の間質液であるwound fluidの性質をin vivoにおいて検討した.
1)ラットの背部に正中創を設け,周辺皮下に10日間挿入したstainless stell mesh cylinderからwound fluidを得た.それはlectin刺激によるlymphocyte blastogenesisを抑制した.2)同種皮膚移植ラットにwound fluidの腹腔内投与を連日おこなつた結果,生理食塩水投与群のgraft生着期間16.8±5.6日に比べ30.4±1.7日と延長し統計学的に有意差をみとめ,in vivoでもwound fluidは免疫抑制的に働いた.その性質は同種動物間でtransferableであつた.3)凍結乾燥豚真皮をラットに移植したモデルでは,生理食塩水投与群のgraft生着期間8.8±1.0日に比べwound fluid腹腔内連日投与群は8.6±2.2日と延長を認めず,wound fiuidは異種皮膚移植の拒絶反応を抑制しえなかつた.4)wound fluidに含まれるthromboxan B2および6-keto-prostaglandin-F1αはserum中の濃度と差はない.prostaglandin E群は非受傷群に比べ増加を認めるが,serumと比較すると統計学的有意差は無く,切創局所での特異的な増加は認めない.5)ラットにおける熱傷局所の間質液ではthromboxan B2,6-keto-prostaglandin F1αおよびprostaglandin E群がそれぞれ非受傷群と比べ8.6倍,4.2倍,139倍と著明な増加を認めた.
以上よりラットのin vivoでもwound fiuidは免疫抑制能を有している事が証明されたが,それはthromboxanやprostaglandinを介さないことが示唆された.

キーワード
創傷治癒, wound fluid, 免疫抑制因子, 皮膚移植, prostaglandin


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