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日外会誌. 88(11): 1576-1583, 1987


原著

細胞動態の変化にもとづいた化学内分泌療法の増強効果に関する実験的研究

東北大学 医学部第2外科学教室(指導:葛西森夫教授)

植木 浜一

(昭和62年1月19日受付)

I.内容要旨
化学内分泌療法の効果的投与法を求める目的で,内分泌療法と化学療法施行後の腫瘍の細胞周期の変化を解析することによつて,有効な併用法について検討した.
実験材料としては,in vitroでは,エストロジェン受容体をもつ人乳癌細胞株MCF-7を用いた.in vivoでは,男性ホルモン依存性マウス乳癌SC-115を用いた.内分泌療法単独では,in vitroにおけるMCF-7に対するタモキシフェンの効果も,in vivoにおいてのSC-115に対する除睾術の効果も,持続的なG1期からS期への細胞の移行抑制であつた.
化学療法としてMCF-7に対して5FU 1μg/ml投与,SC-115に対して5FU 40mg/kg投与した場合のどちらも,細胞周期上の変化は,S期の減少であつた.この効果は短期間のもので,その後の細胞のS期への再移行が双方に認められた.
内分泌療法は持続的に施行できるものなので,これに対して5FUの併用を行なうという形で,その投与時期の検討を行なつた.in vitro,in vivoの双方で,5FU投与後に内分泌療法を施行した群が,内分泌療法施行後に5FUを投与したものより有効であつた.
これは,細胞周期の変化に注目してみると,5FUが腫瘍のS期の多いものに有効に作用するということであり,5FU単独の腫瘍の細胞動態に与える効果より予想できるものであり,cell kineticsdirectedな投与法により化学内分泌療法の有効性を高めることができた.

キーワード
化学内分泌療法, 乳癌, 細胞周期, フローサイトメトリー, 細胞動態

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