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日外会誌. 88(11): 1565-1575, 1987


原著

イヌ肝類洞壁細胞の免疫応答における役割
類洞壁内皮細胞および Kupffer 細胞とリンパ球の混合培養による検討

岡山大学 医学部第1外科学教室(指導:折田薫三教授)

桧垣 健二

(昭和62年1月5日受付)

I.内容要旨
分離肝類洞壁細胞(SLC),中でも肝類洞壁内皮細胞(SEC)およびKupffer細胞(KC)が免疫応答にどの様に関与しているかを調べる目的で,これらをstimulator cellとして同種リンパ球と混合培養(MLC)することにより免疫学的解析を試みたところ以下の結果をえた.
1)SECおよびKCは雑種成犬肝SLCより遠心流出法を用いて分離した.そのpurityはSEC65%,KC 78%,viabilityはそれぞれ87.3%,96.3%であつた.
2)SEC,KCはMLCを強く刺激し,mitogen induced T cell activationにおいてaccessory functionが認められた.KCはこれらの反応でdoseを増やすと強い抑制作用がみられた.
3)SEC,KCのクラスII抗原陽性率をOKIa1抗体を用いて検討したところ76.2%と15.7%であつた.これらをOKIa1抗体と補体で処理することによりその陽性率はそれぞれ1.3%と1.2%に低下し,上記反応のstimulatorとしての能力が失われた.
4)IndomethacinによりKCのprostaglandin(PG)分泌能を検討したところ,確証はえられなかつたもののその可能性が示唆された.
5)SEC,KCをリンパ球と混合培養した結果PHAによりblast化した同種リンパ球に対するCTLが誘導された.また,MLCで誘導されたCTLはSEC,KCに対して細胞傷害性を示した.しかもこれらの反応はstimulatorのtarget cellに比較的特異的であつた.
以上によりクラスII抗原陽性SECおよびKCはMLC,mitogen induced T cell activationに対し抗原提示能をもち,KCはPG分泌の可能性が示唆された.また,これらの細胞はクラスI抗原ももち,免疫応答のafferent phaseだけでなくefferent phaseにおいても重要な役割を果たすと考えられた.

キーワード
Sinusoidal Endothelial Cell, Kupffer Cell, Mixed Lymphocyte Endothelial Cell Culture(MLEC), Mixed Lymphocyte Kupffer Cell Culture(MLKC), Liver Allograft Rejection


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