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日外会誌. 88(11): 1542-1553, 1987


原著

モノクローナル抗体による脾内ならびに末梢血Tリンパ球subsetの検討
一とくに特発性門脈圧亢進症,肝硬変症について一

大阪市立大学 医学部第1外科(指導:梅山 馨教授)

武田 温裕

(昭和61年12月27日受付)

I.内容要旨
モノクローナル抗体,OKシリーズ,Leuシリーズを用い,特発性門脈圧亢進症(IPH),巨脾性肝硬変症各6例の末梢血および脾内のTリンパ球ならびにそのsubsetについて検討し,以下の結果を得た.
1. 健常成人の末梢血中Tリンバ球並びにsubsetの百分率は,OKシリーズ(OKT3,OKT4,OKT8),Leuシリーズ(Leu4,Leu3a,Leu2a)の間には差は認めなかつた.IPH,肝硬変症ではOKT3,Leu4陽性リンパ球百分率(panT),OKT4,Leu3a陽性リンパ球百分率(H/I T)ではとくに差はなく,OKT8,Leu2a陽性リンパ球百分率(S/C T)ではやや低下の傾向がみられた.
2. 脾摘術後の末梢血中のpanTはIPH,肝硬変症ともに術前とほとんど変化なかったが,H/I Tは低下の傾向を,S/C Tは上昇の傾向がみられた.
3. 正常脾(胃潰瘍や脾外傷例など)内のリンパ球浮遊液中のpanTは,OKT3で33.1%,Leu4で37.9%で,subsetではH/I TはOKT4で18.9%,Leu3aで20.9%で,S/C TはOKT8で15.1%,Leu2aで14.0%であった.一方,IPH,肝硬変症では脾内panTならびにH/I Tはとくに対照脾と差はなかったが,S/C TではIPHにおいてやや正常脾より高値を示した.
4. 酵素抗体法による脾内リンパ球ならびにそのsubsetの分布は,正常脾では,OKT3陽性リンパ球は動脈周囲に集簇して存在し,B1陽性リンパ球はOKT3陽性リンパ球集簇部の外側に外套状に存在し,またOKT3陽性リンパ球集簇部の間に狭まるような形で存在した.OKT4腸性リンパ球はOKT3陽性リンパ球の分布域とほぼ一致して存在したが,OKT8陽性細胞は同部位にはほとんどみられず,髄索内に散在した.なおIPH脾,肝硬変症脾では,分布域はほぼ同様であったが,髄索内のOKT8陽性リンパ球は正常脾に比してやや多い傾向がみられた.
以上の成績からIPHの病態には何らかの免疫学的機序の関与が示唆された.

キーワード
モノクローナル抗体, 脾腫, リンパ球, 特発性門脈圧亢進症, 肝硬変症

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