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日外会誌. 88(10): 1437-1443, 1987


原著

外科治療成績よりみたStageIV胃癌の亜分類の試み

東京医科歯科大学 第1外科

羽生 丕 , 斉藤 直也 , 佐藤 康 , 竹下 公矢 , 砂川 正勝 , 遠藤 光夫

(昭和61年12月2日受付)

I.内容要旨
現行の胃癌取扱い規約によるStageIV胃癌の中には治癒切除が可能なものから,もはや外科治療の対象にならない末期癌まで含まれている.今回は手術の根治性と術後遠隔成績の面からその亜分類を試みた.
検索 I:Stage IV胃癌切除耐術者211例のうち術後 1年未満で死亡した105例(短期死亡群)と,術後2年以上生存した40例(長期生存群)のP,H,N,S因子などを比較し,以下の成績を得た.1)P3,H2-3,N4(+)などの症例はすべて短期死亡群に含まれていた.2)長期生存群では短期死亡群に比べP0かつH0,あるいはP0-1かつH0-1の症例,1個の因子だけでStage IVとなった症例,治癒切除例が有意に多かつた. 3)S3症例の頻度については両群間に差を認めなかった.
検索II:Stage IV胃癌切除耐術者211例について,検索Iで差を認めた因子ごとに累積生存率を比較した.1)P0かつH0の症例の生存率は1~4年において,またP0-1かつH0-1の症例は2~4年において,その他の症例の予後を有意に上回った. 2)N4 (+)例には2年以上生存例はなく,その1年,2年生存率はN0-3症例に比べ有意に低かった.3)Stage IV因子の数や手術の治癒度も生存率を大きく左右することが判明した.
以上の成績をもとにStageIVをIVa(P0,H0,N3,S3)とIVb(P1-3,H1-3,N4)の2群に亜分類した.両群間の予後を比較すると, IVaの生存率は1~ 5年のすべてにおいてIVbの予後を有意に上回った.IVaの症例はIVbの症例と異なり,R3の郭清やS3の臓器の合併切除を行えば規約上治癒切除が可能であり,Stage IV胃癌にたいする手術の根治性を考える上からもこの亜分類は有意義と思われた.

キーワード
胃癌取扱い規約, StageIVの亜分類, StageIV胃癌の遠隔成績

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