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日外会誌. 88(10): 1430-1436, 1987


原著

DNA ploidy patternと腫瘍マーカー産生能からみた胃癌の悪性度

金沢大学 医学部第2外科

杉山 和夫 , 米村 豊 , 西村 元一 , 橋本 哲夫 , 藤村 隆 , 三輪 晃一 , 宮崎 逸夫

(昭和61年11月13日受付)

I.内容要旨
相対的非治癒以上の手術が施行された胃癌172例を対象として顕微蛍光測光法による核DNA量の測定を行いploidy pattern I型,II型,III型に分類し病理組織学所見との比較検討を行つた.また,免疫組織化学的にCEA,AFP,hCG 3種の腫瘍マーカーを染色することによつて腫瘍マーカー組織内産生能をみた.さらに,腫瘍マーカー産生能とploidy patternとの関連から胃癌の悪性度について検討した.
深達度がmの胃癌にはploidy pattern I型のものが多く,I型の胃癌は粘膜内にとどまりやすいと考えられた.
陥凹型早期胃癌および肉眼型4型進行胃癌にはpolidy pattern I型が多く,隆起型早期胃癌および肉眼型1型,2型進行胃癌にはploidy pattern III型が多かつた.
組織型では分化型胃癌にploidy pattern III型が,未分化型胃癌にploidy pattern I型が多かつた.
ps(prognostic serosal factor)が陽性の場合はploidy patternにかかわらず予後不良であり,psはploidy pattern以上に予後規定因子として重みがあると考えられた.しかし,psが陰性の場合,静脈侵襲陽性率はI型18%,II型35%,III型44%,リンパ管侵襲陽性率はI型40%,II型71%,III型85%,リンパ節転移陽性率はI型35%,II型56%,III型70%といずれもIII型がI型に比べ有意に高率であり,III型の胃癌は肝再発,リンパ節再発が多く予後不良であつた.
AFP陽性率はI型6%,II型9%,III型17%,hCG陽性率はI型11%,II型22%,III型46%といずれもIII型で高率であつた.
ploidy pattern I型<II型<III型の順に,さらに,腫瘍マーカー産生種類数が増すにつれて予後が不良になつており,とくにIII型で腫瘍マーカー産生種類数が2種類以上の胃癌は最も予後不良であつた.
ploidy patternと組織内腫瘍マーカー産生能を同時に検索することは胃癌の悪性度を評価するうえで有意義と考えられる.

キーワード
胃癌, DNA polidy pattern, 腫瘍マーカー

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