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日外会誌. 88(10): 1423-1429, 1987


原著

散発性および遺伝性甲状腺髄様癌患者の副腎髄質病変の診断と長期追跡について

1) 香川医科大学 第2外科
2) 隈病院 
3) 京都大学 医学部核医学
4) 大阪大学 医学部第4内科

宮内 昭1) , 松塚 文夫2) , 隈 寛二2) , 遠藤 啓吾3) , 荻原 俊男4) , 前田 昌純1)

(昭和61年12月25日受付)

I.内容要旨
甲状腺髄様癌患者の中には遺伝性に発生し多内分泌腺腫瘍症(MEN)2型に属し,副腎褐色細胞腫を合併するものがある.そこで髄様癌患者における副腎髄質の異常の有無を調べるため,尿中カテコラミン排泄量の測定, CTスキャン, 131I-MIBGシンチグラフィを行い,副腎病変の経時的変化をみるため最長8年間の追跡を行った.対象は不全型を含むMEN2型15例と散発性髄様癌22例の計37例である.MEN 2型においては, 1日尿中エピネフリン排泄量(E)30μg/日以上の6例全例にCTスキャンにて副腎の腫瘤あるいは腫大を認め,このうち4例は手術で褐色細胞腫や副腎髄質過形成が確認された.E<30μg/日の9例中エピネフリン/ノルエピネフリン比(E/N)が0.3より大である2例ではCTスキャンにて小さい副腎腫瘤を認め, E/N<0.3の症例では3例のみに一側副腎の軽度の腫大を認めた.131I-MIBGシンチでは,手術で確認された褐色細胞腫およびCTスキャンにて1cm以上の腫瘤を認める症例は全て副腎に集積を認めた.髄質過形成の2副腎のうち1例は陽性,1例は陰性であった.なお,追跡期間中に4例に褐色細胞腫が出現あるいは顕性化した.このほか, CTスキャンで副腎腫瘤がみられるが症状のない2症例のうち1例では腫瘤が増大したが,他の1例ではほとんど変化はみられなかった.
MEN 2型患者の副腎髄質には,ほぼ正常のもの,髄質過形成,不顕性の褐色細胞腫,顕性の褐色細胞腫と幅の広い連続した病変があり,時間経過とともに徐々に病変が進行する.副腎髄質病変の診断には,尿中カテコラミン排泄量,CTスキャン,131I-MIBGシンチが有用であり,髄質過形成はCTスキャンにて副腎の軽度の腫大として認められ,131I-MIBGシンチでは描出される場合とされない場合とがある.一方,散発性髄様癌患者の副腎には異常を認めなかった.

キーワード
甲状腺髄様癌, 褐色細胞腫, 多内分泌腺腫瘍症2型, CTスキャン, 131I-MIBGシンチグラフィ


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