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日外会誌. 88(8): 1031-1035, 1987


症例報告

慢性腎不全患者に対する A-C バイパス術の1例

藤田学園保健衛生大学 胸部外科

倉橋 真人 , 杉村 修一郎 , 小沢 勝男 , 服部 良信 , 渡辺 浩次 , 蔡 垂昇

(昭和61年10月9日受付)

I.内容要旨
10年来,慢性腎不全にて週3回の血液透析を受けており,頻回の胸痛発作を有する45歳の男性にA-Cバイパス術を施行した.術前管理の一環として前日に血液透析を行ない,手術は気泡型人工肺を用い,低希釈率体外循環下にて行なった.術中透析の必要はなく,左冠動脈前下行枝,右冠動脈の2枝バイパスを作製した.手術終了前に腹膜透析用のカテーテルを留置し,術直後より腹膜灌流を施行した.術後は血行動態も安定し,両側に胸水貯留を認めたもののドレナージにて軽快し,第6病日より血液透析に移行,退院後も週3回の透析を受けているが,胸痛も消失し,平穏な生活を送つている.慢性腎不全に合併したA-Cバイパス術の報告は,本邦では少なく,本症のように完全無尿の報告はない.今後冠動脈疾患の増加に伴い,透析患者に対するA-Cバイパス術の増加が予想され,手術周期を通じて一層の研究が必要であると考える.

キーワード
慢性腎不全, A-C バイパス術


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