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日外会誌. 88(8): 1024-1030, 1987


症例報告

異所性胃粘膜(粘膜下嚢胞)を合併した(早期)胃癌症例

山口労災病院 外科
*) 山口労災病院 内科
**) 山口大学 第2病理

中野 秀麿 , 中原 泰生 , 水本 一生 , 吉岡 嘉明 , 田村 陽一 , 田辺 満彦*) , 荻野 哲朗**)

(昭和61年2月22日受付)

I.内容要旨
72歳の男性で,食欲不振と空腹時の心窩部痛を訴えて来院した.胃内視鏡,胃透視検査より多発胃癌と診断し,胃全摘術, R2リンパ節郭清,β吻合を行つた.幽門前庭部のIlc型早期胃癌は深達度がsmで,主として管状腺癌であった.胃体部小弯側前後壁の多発性小隆性病変は異所性胃粘膜が集簇したもので,その一部に深達度mの印環細胞癌を伴つていた. 2つの病巣は組織学的に連続性はなく独立し,組織学的進行程度はPoHon(-), ps (-), stage I, aw(-), ow(-)であつた.
多発性びまん性異所性胃粘膜は良性胃粘膜下腫瘍と言われているが,その一部に癌合併の報告も多く,胃透視および胃内視鏡検査で癌の合併がないと判断された場合でも,微小胃癌の見落しは皆無と断言できないために,癌合併時はもちろんのこと,異所性胃粘膜は発見できしだい早期に取り残すことなく切除した方が良いと考える.
多発性びまん性異所性胃粘膜の成因については,先天性の迷入説と後天性説があるが,自験例の組織所見からはいずれとも決定できなかつた.

キーワード
異所性胃粘膜, 多発早期胃癌, 多発性びまん性胃粘膜下額腫

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