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日外会誌. 88(8): 1017-1023, 1987


症例報告

多内分泌腺腫瘍症 (MEN) Ilb の1手術例と本邦報告例の集計

1) 帝京大学 医学部第1外科学教室
2) 伊藤病院 
3) 慶応義塾大学 医学部病理学教室
4) 慶応義塾大学 医学部外科学教室

高見 博1) , 尾崎 修武2) , 伊藤 國彦2) , 四方 淳一1) , 細田 泰弘3) , 三村 孝4) , 阿部 令彦4)

(昭和61年10月17日受付)

I.内容要旨
甲状腺髄様癌,褐色細胞腫,粘膜神経腫を有する多内分泌腺腫瘍症(MEN)IIbの1手術例を経験した.症例は35歳,男性で左前頚部腫瘤を主訴として来院した.髄様癌は甲状腺両葉にみられ,甲状腺全摘と両側の保存的頚部郭清を行つた.褐色細胞腫は両側副腎にみられ,副腎全摘後,皮質を細切し,腹直筋内に自家移植した.巨大結腸症とマルファン様体型も認められたが,家族歴はなかった.術後経過順調で,術後24ヵ月目の1986年8月現在,患者の副腎,皮質機能は正常域下限にあり,ハイドロコーチゾンを3日毎に10mg投与している.血中カルシトニン値とCEA値は正常域にある.本邦の報告15例では,髄様癌と粘膜神経腫は全例に,褐色細胞腫は9例にみられ,両側・多中心性発生が多い.髄様癌には甲状腺全摘が,褐色細胞腫では両側性には副腎全摘が行われている.副腎全摘後の皮質の自家移植は意義ある方法と考えられる.

キーワード
multiple endocrine neoplasia, 甲状腺髄様癌, 褐色細胞腫

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