[書誌情報] [全文PDF] (4967KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 88(8): 1007-1016, 1987


原著

一腎性腎血管性高血圧症の血行再建に関する臨床的ならびに実験的研究

東京大学 医学部第2外科教室 (指導:出月康夫教授)

田中 潔

(昭和61年11月11日受付)

I.内容要旨
解剖学的あるいは機能的に一側の腎を欠く患者に発生した腎血管性高血圧症(RVH)の問題点を,臨床症例および雑種成犬を用いた腎動脈加圧実験により検討した. 
解剖学的一腎性RVHでは末梢静脈血レニン活性が明らかな高値を示したのは5例中1例のみであつた.一腎のため腎静脈血レニン活性左右比も得られないので,レニン活性値を確定診断や手術適応決定に用いることは適切でない.ほとんどの症例が術前にすでに腎機能障害をきたしており,血行再建は腎血流増加による腎機能改善という意味でも重要となる.血行再建直後に著しい多尿がみられたが,その原因は,GFRおよび尿中ナトリウム排泄量が増加することにあり,中でも直接的な原因はナトリウム排泄増加にあると考えられた.血行再建に成功したにもかかわらず術後腎機能増悪から腎不全に陥つた症例があつたが,術中腎動脈遮断時間とは相関はなかつた.一次腎摘・二次腎摘の摘出腎の病理組織学的比較検討,ならびに,雑種成犬を用いた腎動脈加圧注入実験では,腎灌流圧上昇にもとつく腎組織障害の所見は光顕的にはみとめられなかつた. 
一腎性RVHの血行再建にあたつては,確実な手術手技に加えて,Swan Ganz catheterなどを用いての多尿期の厳重な水・電解質バランスの管理,および術後の腎機能増悪に対する時機を逸することのない血液透析が重要である.

キーワード
一腎性腎血管性高血圧症, 血行再建, 腎血行再建後多尿, 急性高血圧性組織障害


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。