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日外会誌. 88(8): 1000-1006, 1987


原著

頭蓋外動脈閉塞性病変の外科的治療

*) 慶応義塾大学 医学部外科学教室(現在, 浦和市立病院外科)
**) Aggertalklinik 外科

松本 賢治*) , Reinhard Giessler**)

(昭和61年11月12日受付)

I.内容要旨
1981年9月1日より1985年12月31日まで,西独Aggertalklinik(5250 Engelskirchen)において手術された頭蓋外動脈閉塞性病変(Occlusive Disease of Extracranial Arteries;ODECA)の患者219名,257例につきその治療の問題点を検討した. 
初回手術での手術死亡は2例(0.78%,1例は脳虚血,他の1例は心筋梗塞に起因)であつた.術後一過性脳虚血発作を合併したのは4例(1.56%)であつたが,パッチ形成術を加えていたもの33.3%,非パッチ形成術0.8%であり,前者の場合,術後の合併症発生率が有意に(p<0.05)高いことが示唆された.なお,術中内シャント内に血栓の発生をみた症例が167例中2例(1.2%)認められた. 
術後再狭窄を来たしたのは11例(4.3%)であり,全例頚動脈分岐部の病変であつた.内8例に再手術を加えたが,6例は病理学的にintimal fibrosisに起因する早期再発(術後1.5年以内)のためパッチ形成術を,他の2例は病理学的にatherosclerosisの再発に起因する晩期閉塞(術後1.5年以上)のため,血栓内膜摘除術とパッチ形成術をそれぞれ施行した.なお,初回手術でパッチ形成術を加えていたもの1例(再発率16.7%),非パッチ形成術10例(再発率4.0%)であり,パッチ形成術を加えても必ずしも再発率が低下するとは言い難く,むしろ術後仮性動脈瘤発生の危険性もあり,その適応は慎重であるべきものと思われた.一方,従来指摘されているatherosclerosisの危険因子と術後再発との有意の関係は得られなかつた. 
以上の成績より,ODECAの治療においては,従来指摘されている術中内シャント利用の有無およびパッチ形成術の適否等の問題点もさることながら,術後いかなる症例に再発が起こり得るかを究明し,それをいかに防止するかが今後の課題と思われた.現時点では,術後Digital Subtraction Angiography(DSA)の利用が再発の早期発見への一助となるものと期待される.

キーワード
ODECA, 術後再狭窄, 内シャント, パッチ形成術, DSA

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