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日外会誌. 88(8): 982-990, 1987


原著

膵移植を目的とした各種膵管処理法による膵内分泌機能への影響

東北大学 医学部第2外科教室 (指導教官:葛西森夫教授)
*) 仙台社会保険病院 外科

三浦 俊治 , 田口 喜雄 , 神保 雅幸 , 小態 司郎*) , 岡崎 肇*) , 佐々木 崇 , 葛西 森夫

(昭和61年3月1日受付)

I.内容要旨
部分膵移植では膵管処理法が大きな問題となつている.その方法の一つである膵管内高分子化会物充填法は手技が単純で合併症が少ないという利点があるが,内分泌機能に関し批判的な意見もある.そこで今回犬を用い,他の方法とともに術後の組織学的,生理学的変化について検討を行つた. 
対象及び方法:雑種成犬膵右葉を用い,対照群として膵管十二指腸吻合を行ない,I群膵管結紮,II群腹腔内膵管開放,III群Neoprene及びEthiblocによる膵管内充填法をそれぞれ行なつた.全例右葉は切除した.これらの実験犬を用い,経静脈的糖負荷試験(iv-GTT)及び血清アミラーゼの測定を定期的に行つた.各群とも術後3ヵ月,あるいはそれ以降にも生検を行ない組織学的検討を加えた. 
結果:術後1ヵ月のiv-GTT血糖消失率(K値)は対照群と比較し3群とも著明に低い,しかし3ヵ月後III群Neoprene,Ethiblocとも有意に回復しており,I,II群に比し高いK値を示した.血中インシュリン値でも同様の傾向が示された.3ヵ月以上1年までの長期観察ではIII群は良好な耐糖能が保たれたが,I群では1例に高血糖を認めた.III群の血清アミラーゼ値の上昇は他群に比べ軽度であり,短期間に術前値まで低下した.III群は組織学的に腺房細胞の変性,脱落,間質の線維化が他群と比較し早期に完成された. 
考案:充填法は内分泌機能上術後1ヵ月から3ヵ月にかけて明らかな改善傾向がある. 
これは腺房細胞の脱落,間質の線維化が早期に完成され比較的早期に炎症反応が治まり内分泌機能の回後が助長されていることによると思われる.内分泌機能がさらに長期に保たれるか否かの解明には内分泌機能回復の機序を明確にする必要がある. 
結語:膵管内高分子化合物充填法を比較検討し,安全で,3ヵ月までの内分泌機能も保たれることが示された.

キーワード
膵臓移植, 膵管内高分子化合物充填法, 膵管結紮, 腹腔内膵管開放, 膵線維化

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