[書誌情報] [全文PDF] (1258KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 88(7): 894-902, 1987


原著

心筋梗塞後左室瘤切除症例に於ける心機能推移と社会復帰
―特に内科的治療との比較検討―

東邦大学 医学部胸部心臓血管外科 (主任:小松 壽教授)

伊藤 信行

(昭和61年10月8日受付)

I.内容要旨
1977年2月より1984年8月迄に, 教室及び循環器診断センターにて治療された心筋梗塞後左室瘤63例を対象とし, そのうち外科治療が施行された26例 (平均年齢52. 3±8. 2歳) と, 内科治療のみによる37例 (平均年齢53. 5±10. 1歳) の2群における一般左室機能指標と左室機能曲線推移, 自覚症改善度, 社会復帰率, 5年累積及び相対生存率について対比検討した. 観察期間は前群で7~78カ月, 平均42.0カ月, 後群で9~77カ月, 平均41.3カ月であつた.外科治療群では術後平均6カ月, 内科治療群では平均15ヵ月経過後の各10例での左室機能推移を対比してみると, 外科治療群で左室拡張末期圧 (LVEDP) , 拡張末期容量係数 (LVEDVI) , 壁拡張末期ストレス (LVDWS) , 駆出率 (EF) , 1回仕事率係数 (LVSPI) , 1回仕事量係数 (LVSWI) は統計学的に有意な改善を認め (p<0.01~0.05) , 心係数 (CI) 及び最大左室内圧変化率 (Max dp/dt/p) は改善傾向を示した (p<0.1) . 左室機能曲線推移を示すベクトルスロープ⊿LVSWI/⊿LVEDP, ⊿Maxdp/dt/p/⊿LVEDPの対比でも, 外科治療群では術後左上方偏位を示すのに対し, 内科治療群では右下方偏位を示し, 前群における術後左室機能改善, 逆に後群では機能低下が認められた. 外科治療群における自覚症改善度は良好であり, 術後就労率は84%, 内科治療群でのそれは69%であつた.
外科治療群での近接死は無く, 遠隔期死亡1例にたいし内科治療群では8例の心臓死を認め, 5年累積及び相対生存率は前群でそれぞれ95.7%, 100%, 後群で80.7%, 86.8%であつた.

キーワード
左室瘤, 外科内科治療, 左室機能, 社会復帰, 生存率

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。