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日外会誌. 88(7): 845-851, 1987


原著

上部胆管癌切除例の検討
一とくに癌腫の組織型別にみた進展様式を中心に

東北大学 医学部第1外科教室

大内 清昭 , 鈴木 正徳 , 松野 正紀 , 佐藤 寿雄

(昭和61年8月26日受付)

I.内容要旨
教室で経験した上部胆管癌切除34例について, 癌腫の組織型とその予後を規定すると考えられる諸因子との関連について検討を加えた. 癌腫の組織型別では乳頭腺癌の予後が最も良好であり3年生存率は75%であつた. 一方, 管状腺癌・高分化型, 中分化型のそれはともに21%であり, 低分化型には2年生存例はみられなかつた. stage決定に関与する諸因子の有無別に3年生存率を比較すると, 漿膜浸潤s (-) 50%, (+) 6%, 肝浸潤hinf (-) 24%, (+) 0%, リンパ節転移n (-) 28%, (+) 0%, 脈管侵襲v, ly, pn (-) 67%, (+) 23%, (++) 0%と, これらの因子はいずれも上部胆管癌の予後を規定する因子として重要であつた.
乳頭腺癌はその75%がs0, 50%がv0, ly0, pn0であり全例がhinf0, n0と, 明らかに限局性で浸潤傾向に乏しかつた. 一方, 管状腺癌, 特に低分化型ではs0はみられず, その56%のみがhinf0, 33%のみがn0であり, 全例に脈管侵襲を認め, 浸潤傾向の強い進展した癌腫が多くを占めた. また, 乳頭腺癌の75%が治癒切除可能例であつたのに対し, 低分化型管状腺癌では22%のみであつた.
以上のことより, 癌腫の組織型がその進行度とともに症例の予後を規定する基本となつているものと考えられた.

キーワード
上部胆管癌, 癌腫の組織型, 上部胆管癌の予後規定因子, 肝切除

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