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日外会誌. 88(7): 816-825, 1987


原著

固型癌における尿中Polyamineの臨床的研究

昭和大学 医学部外科学教室 (指導:石井淳一教授)

角田 明良

(昭和61年9月16日受付)

I.内容要旨
各種癌疾患におけるヒト尿中のPolyamineを酵素法にて定量し, その臨床的意義について検討した.
1) 健康成人 (148例) の尿中Polyamine平均値は23. 6±7.1μmole/g・crであり,m+2S. D. =37.8μmole/g・crを越えるものを陽性とした.
2) 非癌疾患 (52例) における尿中Polyamine平均値は25.0±9.5μmole/g・crで, 陽性率は9. 6%であつた. このうち炎症性疾患で陽性値を示す例がみられた.
3) 癌疾患全体 (170例) の術前尿中Polyamine平均値は46.1±50.6μmole/g・crであり (陽性率40.6%) , 特に胃癌, 大腸癌で高値を示した. また, 術後再発例との比較では胃癌, 大腸癌の再発例は術前値と比べ著しく高値を示した.
4) 胃癌及び大腸癌では尿中Polyamineは他のParameterと同程度の優れた陽性率を示し, combination assayにより診断率は向上した.  
5) 尿中Polyamineは胃癌, 大腸癌の進行度に並行して高値を示した. 胃癌ではps (+) 群, n (+) 群が各々 ps (-) 群, n (-) 群より有意に高値を示し, Polyamine正常値例における治癒切除率は86%と高率であつた. 大腸癌ではps (+) 群がps (-) 群より高値を示す傾向がみられたものの, 腫瘍径との間により強い相関が認められた.  
6) 癌疾患の治癒切除例では尿中Polyamine値は術後一過性に高値を示すものの, 術後5週までに正常値に復する傾向が認められた. これに対し非治癒切除例では尿中Polyamine値は, 術後正常値に復することなく高値を持続する傾向がみられた.
以上の結果より, 尿中Polyamine値は胃癌, 大腸癌の術後follow upにおいて再発の診断に有用であり, また他のparameterとのcombination assayにより癌の診断にも応用できると共に癌の進行度の判定, 手術効果や予後の判定のparameterとしてある程度利用できることを明らかにした.

キーワード
尿中Polyamine, 固型癌, 進行度別診断, 腫瘍マーカー


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