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日外会誌. 88(6): 746-754, 1987


原著

良性および悪性乳腺疾患組織における Estrogen Receptor の動態とその臨床応用

東京医科歯科大学 第1外科 (主任:遠藤光夫教授)

江渕 正和

(昭和61年7月31日受付)

I.内容要旨
乳癌52例と良性乳腺疾患(良性群)61例を対象に,細胞質・核各々の非占有型と占有型のestrogen receptor(ER),および細胞質の非占有型progesterone receptor(PgR)を測定し,核内外のERの動態およびPgRとの相関を検討した.良性群中の月経周期の明確な症例については,血中estradiol (E2)とprogesterone(PRG)を測定し,非占有型の細胞質ER(ERc)およびPgRとの相関を検討した. 
その結果,非占有型ERcは,乳癌で37%が30fmol/mg protein以上であつたのに対し,良性群では30fmol/mg protein以上の値を認めなかつた.占有型ERcは,非占有型ERcと比較すると,乳癌では閉経前・後ともに有意に低値であつたが,良性群では有意差はなかつた.核ER(ERn)は,乳癌では閉経前症例において,非占有型ERnに比べ占有型ERnが有意に低値であつたが,良性群では,非占有型,占有型ともに低く有意差は認められなかつた.即ち,乳癌のERは,細胞質・核ともに非占有型の形で存在している比率が大であるのに対し,良性群のそれはほとんど細胞質中のみに非占有型・占有型の形で存在していた.血中のE2と非占有型ERcとの間には相関が認められなかつた. 
PgRは乳癌,良性群ともに低値で一定の傾向はないが,乳癌の閉経後症例において,非占有型ERcとの間に正の相関を認めた.血中PRGとPgRとの間には,黄体期のみ負の相関を認めた. 
再発乳癌12例に対し内分泌療法を施行した結果,非占有型ERcが30fmol/mg protein以上の4例中3例(75%)に有効であつた.

キーワード
Estrogen receptor, Progesterone receptor, 血中Estradiol, 良性乳腺疾患, 乳癌

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