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日外会誌. 88(6): 686-695, 1987


原著

噴門部のリンパ流
一SPECTによる検討を中心にして一

岡山大学 医学部第1外科教室(主任:折田薫三教授)

河野 良寛

(昭和61年7月30日受付)

I.内容要旨
噴門部癌の合理的リンパ節郭清を行うため経内視鏡的RI-Lymphographyを29症例に施行し噴門部のリンパ流の検討を行つた.29例中15例にSingle Photon Emission Computed Tomography(SPECT)を併用し噴門部のリンパ流を直接,画像としてとらえた.また,各リンパ節のRI uptakeの測定や,実際の噴門部癌38例のリンパ節転移状況も合せて検討した. 
SPECTを併用した経内視鏡的RI-Lymphographyは噴門部のリンパ流の画像化にきわめて有用と考えられた.一方,従来のPlanar画像は,リンパ節の描出能は不良で動態的解析も不可能であつた. 
噴門部より腹腔方向へ向う壁外リンパ流は主として左胃動脈を経由し,一部後胃動脈,左下横隔膜動脈を経由して腹腔動脈周囲や左腎静脈上部の傍大動脈リンパ節へ流入するのが認められた.SPECTによる大動脈周囲リンパ節の描出率は66.6%であり,特に左腎静脈上部の傍大動脈リンパ節は58.3%に描出された. 
一方,噴門部より上行性のリンパ流もSPECTで描出され,縦隔内へも少なからず流れることを確認し得た. 
また,実際の噴門部癌症例のリンパ節転移部位は噴門部から左胃動脈にそう経路が主体であり,幽門上下リンパ節への転移はわずかで,SPECTおよびRI uptakeの結果もほぼ同様の傾向であつた.しかし,ps(+)群ではps(-)群に比べてn2(+)の頻度が増加しn3(+),n4(+)の症例も認められた.したがつて噴門部早期癌で限局型のものは噴門側切除の適応と考えられるが,進行癌で深達度の深いものは,全摘にくわえて大動脈周囲も含めた広範囲な郭清の必要性が示唆された.

キーワード
噴門部のリンパ流, 噴門部癌リンパ節転移, Single Photon Emission Computed Tomography(SPECT), 経内視鏡的 RI-Lymphography

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