[書誌情報] [全文PDF] (2109KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 88(5): 629-632, 1987


症例報告

腹部放線菌症の1例
―自験例と本邦集計例の検討―

岐阜市民病院 外科

松村 幸次郎 , 田中 千凱 , 伊藤 隆夫

(昭和61年6月12日受付)

I.内容要旨
患者は43歳の男性で,数年来,月1~2回程度の下痢の既往があり,今回腹痛と下腹部腫瘤を主訴として入院した.開腹するに肉腫に類似した腫瘤が回腸と膀胱に強く浸潤し,他の腸管壁にも播種状の病変が認められた.これら浸潤臓器の広範な切除手術が施行されたが,標本より放線菌による炎症性腫瘤と判明した.術後AB-PCが投与され,以後の経過は順調であつた. 
自験例を含めて1954年から1985年間に71例の腹部放線菌症の開腹手術症例があり,このうち男42例,女28例で男性に多く,年齢は40~50代に多く認められた.文献上,本症は穿孔性虫垂炎に続発して回盲部に発生することが多いとされているが,今回の集計では横行結腸にも同頻度に発生しており,また虫垂炎の既往の明らかなものは13例のみであつた. 
腹部放線菌症は希有な疾患ではなく,炎症を伴う腹部腫瘤の鑑別診断に際しては,常に念頭におかれるべき疾患である.

キーワード
腹部内臓放線菌症


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。