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日外会誌. 88(5): 613-621, 1987


原著

代用血管の弾性特性に関する研究

北海道大学 医学部第2外科教室(主任:田辺達三教授)

佐久間 まこと

(昭和61年6月11日受付)

I.内容要旨
移植代用血管と宿主動脈との間の弾性特性の不適合が遠隔期における吻合部狭窄や代用血管閉塞の一因と考えられることから,臨床応用されている各種代用血管のin vitro,in vivoにおける弾性特性と生体内における経時的変化を超音波を用いた高精度微小変位計によつて計測するとともに,宿主動脈の弾性特性との比較検討を行つた.弾性を表わすパラメーターとしてdynamic compliance(Cd)を用い,圧依存性を考慮して管内圧を変化させた時のCdをpressure-compliance curveで表記し,各代用血管の比較を行つた. 
in vitroでは,代用血管の中で最も柔軟な特性を示したのは同種処理𦜝帯静脈であり,自家静脈片,velour型ダクロン人工血管がこれに次ぎ,EPTFEは最も柔軟性に乏しかつた.自家静脈片は平均管内圧が50mmHg以下の低圧領域では極めて柔軟性に富んだが,高圧領域では柔軟性を失いCdは低下した.雑種成犬の腹部大動脈への移植では,同種処理𦜝帯静脈,EPTFEはin vitroの特性と同様の傾向を示したが,velour型ダクロン人工血管のCdは移植後徐々に低下して周囲組織との器質化進展による影響と考えられた. 
宿主動脈とのCdの比較では,いずれの代用血管も成人男性の腹部大動脈,総頚動脈,総大腿動脈のCdより低値をとり,代用血管と宿主動脈との間の弾性特性の不適合は明らかであつたが,動脈硬化例の総大腿動脈と同種処理𦜝帯静脈のCdは近似の値を示した. 
移植後長期間経過した臨床例における各種代用血管のCdはいずれもin vitroと同様の値を呈して特性はよく保持されており,生体内における劣化,変性による弾性変化は認めなかつた.

キーワード
代用血管, 弾性特性, 血行再建, compliance mismatch, ultrasonic displacement meter

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