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日外会誌. 88(5): 562-568, 1987


原著

Crohn 病における肛門部病変
―外科的治療の問題点について―

東北大学 医学部第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

舟山 裕士 , 佐々木 巌 , 今村 幹雄 , 内藤 広郎 , 神山 泰彦

(昭和61年6月16日受付)

I.内容要旨
当科では昭和60年10月までに28例のCrohn病手術例を経験しているが,このうち16例(57%)に肛門周囲膿瘍,痔痩,skin tagまたは痔核,裂肛などの直腸肛門部病変が認められた.直腸肛門部病変の合併は小腸大腸型で最も高く(67%),次いで大腸型(56%),小腸型(43%)の順であつた.発生時期は半数が,Crohn病診断時期以前に発生しており,これらの症例ではCrohn病診断の有力な根拠となるものが多かつた.
直腸肛門部病変を有する16例中13例に外科治療を行なつた.痔核2例に行なつた痔核切除術では2例とも治癒,4例の肛門周囲膿瘍に対して行なつた膿瘍切開ドレナージでは1例に治癒をみたのみで3例は難治であつた.痔瘻に対しては,切開開放術,括約筋温存術式,直腸切断術が行なわれている.切開開放術の3例では1例が直腸腟瘻を合併し難治であるが,2例は治癒しており,括約筋温存術式の2例もともに治癒している.直腸切断術の2例はいずれも高度の直腸病変を有する難治例であり,ともにfecal diversionを施行したにもかかわらず改善がみられず直腸切断術を余儀なくされた.術後も1例は難治性会陰部創を残し,他の1例も尿道皮膚瘻を形成しており治療に抵抗を示している.
肛門部病変と腸病変との関連についてみると,“治癒”切除例に肛門部病変の合併が少ない傾向がみられたほかは関連性は少なく,特に腸管の”治癒”切除による肛門部病変の改善傾向はみられなかつた.
概して直腸病変を有しない低位痔瘻の治療成績は良好で,症例を選び根治術を行なつてよいと思われた.一方,直腸病変を有した4例にはすべてに肛門部病変が合併しており,しかも難治であるのが特徴であつた.直腸病変の程度は予後を左右する重要な因子の一つと考えられた.

キーワード
Crohn 病, 肛門部病変

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