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日外会誌. 88(5): 551-561, 1987


原著

ヒト大腸癌および腺腫組織における腫瘍関連細胞蛋白質に関する研究
―2次元電気泳動法による検索―

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

貞広 荘太郎

(昭和61年6月17日受付)

I.内容要旨
ヒトの大腸癌組織および対照粘膜の細胞蛋白質を,2次元等電点一SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて分析し,腫瘍関連細胞蛋白質の検出を試みた.さらにそれらの結果に基づき,大腸腺腫,腺腫内癌,およびポリープ癌組織の細胞蛋白質を同様の方法で分析し,細胞蛋白質の変動を検討した.
大腸癌組織,対照粘膜および大腸腺腫,腺腫内癌,ポリープ癌組織のいずれの組織からも,分子量で200,000~20,000,等電点でpH 5.5~8.5までの細胞蛋白質約300個がスポットとして分離され,これらのスポットの大多数はいずれの病変にも共通して認められた.
しかし,大腸癌組織には対照粘膜に比し差異を認めるスポットが9個指摘され,このうち対照粘膜には検出されることが少なく,癌組織にはより高頻度に認められた3個のスポット(MW×10-3/pI:82/6.3,65/8.2,56/8.1)および癌組織において対照粘膜に比較し増加していた4個のスポット(72/8.2,72/8.5,61/7.5,38/6.5)は腫瘍関連細胞蛋白質であると推測された.一方,癌組織において対照粘膜に比較し減少していた2個のスポット(31/7.2,28/6.5)は,正常大腸に関連した細胞蛋白質であると推測された.
大腸腺腫,腺腫内癌,およびポリープ癌組織は,これら9個のスポットに関しては大腸癌組織に類似していた.以上の結果はadenoma-carcinoma sequence説に矛盾しない所見と考えられた.

キーワード
大腸癌, 大腸腺腫, 腫瘍関連細胞蛋白質, 2次元電気泳動法

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