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日外会誌. 88(5): 522-528, 1987


原著

ヌードマウスを用いた腎被膜下移植法による制癌剤感受性試験法の基礎的研究

名古屋大学 医学部第2外科学教室

津荷 龍生 , 山内 晶司 , 市橋 秀仁

(昭和61年6月19日受付)

I.内容要旨
ヌードマウスの皮下に人癌を移植して制癌剤の効果をみる方法は,臨床に近い優れた実験系とされているが人癌のヌードマウスへの生着率が低いこと,効果判定までに長期間を要することなどの欠点がある.そこで,制癌剤の効果を短期間に判定する目的で,腫瘍をマウスの腎被膜下に移植し制癌剤の感受性をみる方法の有用性について検討した.
腎被膜下移植と皮下移植では,腫瘍の増殖態度に相違がみられ,腎被膜下移植では移植後早期に腫瘍の増殖が始まりlatent periodがほとんどみられなかつた.また,BALB/cヌードマウスとBDF1マウスの腎被膜下に腫瘍を移植した場合,ヌードマウスでは腫瘍が良好な発育を示したが,BDF1マウスでは4~7日目に腫瘍が退縮した.以上の結果から,腎被膜下移植法による制癌剤感受性試験では薬剤投与スケジュールが1週間を越える場合,ヌードマウスを用いた方が有利であつた.したがつて,ヌードマウスにおける各薬剤のLD値を参考にして薬剤投与量を決定し,効果判定は10~12日目に行う方法を設定した.
この方法では,各薬剤投与後ヌードマウスの体重減少が20%以内に留まり,4種類のヌードマウス可移植性人消化器癌を用いた実験では約3週間で効果判定を行う皮下移植法と効果判定の結果がほぼ一致した.本法は短期間に効果判定を行うことができる利点があり臨床応用が有望と考えられた.

キーワード
消化器癌, 制癌剤感受性試験, 腎被膜下移植法, ヌードマウス

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