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日外会誌. 88(4): 460-468, 1987


原著

肝組織片移植に関する研究
-特に移植片機能について-

金沢大学 医学部第1外科
*) 金沢大学 アイソトープ総合センター

魚津 幸蔵 , 川浦 幸光 , 竹村 博文 , 広瀬 宏一 , 山田 哲司 , 岩 喬 , 森 厚文*)

(昭和61年4月7日受付)

I.内容要旨
脾臓内に肝組織片を移植し生着状況,急性期における機能の有無,および急性肝不全に際し肝機能の補助が可能であるか検討した.
Closed colony雄性Wister系ラット(250g~300g)を使用した.肝左外側葉および中葉切除(68%)を施行後,切除肝を細切り径1mm3程度とした.肝細胞生存率は98%であつた.細切肝を27Gカテーテル針外套を用い膵臓に直接穿刺し300mm3(細噛1.2×107個)注入移植した.実験1:移植ラットを経時的に屠殺し組織学的検討を行つた.実験2:移植1日目,7日目に99mTc-diethyl-IDAを用いてマクロオートラジオグラフィを施行し黒化度を測定した.実験3:肝切除せず,他のラットより肝組織片を移植し24時間後に四塩化炭素1ml/kg,1.5ml/kgを投与した.更に1日目,7日目,マクロオートラジオグラフィを施行し黒化度を測定した.実験4:肝切除せず,他のラットより肝組織片を移植し24時間後に四塩化炭素1.5ml/kgを投与した45匹と四塩化炭素のみ投与したコントロール群20匹を作成し術後1~7日の生存数を比較した.
以上の実験から次の結果を得た.①脾内に移植した肝組織片は集団を形成するが徐々に変性し約1ヵ月で消失した.しかし残存肝細胞群が赤色髄に散在し約12ヵ月以降細胞集団を再構築する例もあつた.②移植後早期の肝組織片は99mTc-diethyl-IDAを取り込むことから生存し解毒機能を営む事を確認した.また,移植後1日目,7日目で肝組織片の解毒機能活性率に有意差はなく宿主肝臓の20%~50%であつた.③四塩化炭素投与にて1日目,7日目共に肝臓,移植肝組織片に黒化度の上昇を認めたが,移植片の解毒機能活性率は変わらなかつた.④肝組織片移植の後に四塩化炭素投与を行い急性肝不全を作成したが移植群は非移植群に比べ有意な生存率の改善を認めた.

キーワード
肝組織片移植, 肝細胞移植, マクロオートラジオグラフィ, 急性肝不全

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