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日外会誌. 88(4): 390-400, 1987


原著

CO2 Laser を用いる新しい血管吻合法
―基礎的並びに臨床的研究―

神戸大学 医学部第2外科

岡田 昌義 , 清水 一太 , 生田 博 , 堀井 弘幸 , 中村 和夫

(昭和60年11月20日受付)

I.内容要旨
近年,レーザーの医学応用はめざましいが,そのほとんどは一般外科,耳鼻科,婦人科,皮膚科領域での応用であり,心臓・血管外科領域での活用はごくまれである.現在血管外科領域での最大の関心事は,最小血管の吻合をいかに容易に実施し,かつ長期の開存性をうることができるかである.たとえば,狭心症に対する外科療法として現在A-C bypassが一般に広く普及しているが,細い冠動脈と大伏在静脈との吻合を早く短時間に行い,しかも長期の開存性をうることである.この点に関し,細小血管の吻合に多数の縫合糸を使用することが大きな問題点であるため,著者は縫合糸を可及的少なくして血管吻合を行うことを考案した.この目的のために低出力CO2レーザーの使用に着目し,本研究を行つた.
まず,血管吻合の至適条件を検討すべく,レーザー出力や照射時間を種々可変させて,各々の組織反応を観察した.その結果,CO2レーザーの出力は20~40mW,照射時間は6~12sec/mmが血管吻合の至適条件である事実を確認した.この条件にもとづき54頭の犬を用いて血管吻合(端々,側々,端側吻合)を70ヵ所で実施したが,beating heart下でもA-C bypassの可能なことを実証した.一方,吻合部の耐圧試験では,300mmHgまで耐応し,引張り試験でも縫合糸を用いる吻合部との間に大きな差異のないことが証明され,臨床応用への可能性が示唆された.また,吻合部の組織学的検索からもレーザーによる吻合部が縫合糸による組織所見よりも治癒過程がスムーズであることが呈示された.
以上の基礎的研究の裏付けをえた後,臨床例28例で,血管吻合を実施し,満足すべき結果をえた.全例術後何の合併症もなく経過は順調である.このような好成績から,レーザーによる血管吻合法は将来臨床面で広く応用される日が到来するものと考えられた.

キーワード
Vascular anastomosis by CO2 laser, CO2 laser output & irradiation time, Aorto-coronary bypass, 血管吻合部強度試験, 血管内視鏡


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