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日外会誌. 88(3): 303-307, 1981


原著

肝切除モデルにおける肝ミクロゾーム機能の測定

筑波大学 臨床医学系外科
*) 筑波大学 社会医学系

石川 詔雄 , 田中 栄之介*) , 辻 勝久 , 深尾 立 , 三澤 章吾*) , 岩崎 洋治

(昭和61年5月16日受付)

I.内容要旨
肝癌に対する外科治療を施行するにあたり肝予備能の診断は,必須なものの一つである.トリメタジオン(TMO)は中性物質で消化管よりの吸収もよく血中の蛋白体とほとんど結合しない.またTMOの生体における唯一の代謝物はジメタジオン(DMO)であり,その代謝は肝に局在すると言われている.そこで,その特性を利用しTMOを経口負荷し血中のDMO/TMO値を求める事により肝ミクロゾーム機能の診断が可能と思われる.
本研究においては,肝障害モデルや肝切除モデルを用い基礎的検討を行つた. TMOは肝のミクロゾームで代謝されたが,腎や肺ではほとんど代謝されなかつた.四塩化炭素投与による急性および慢性肝障害モデル実験ではTMO N-脱メチル化活性とTMO負荷試験による血中DMO/TMO値はともに低下した.また肝切除モデルにおける術後経過をみると, TMO N-脱メチル化活性は肝のチトクロームP-450総量を反映しており,それはTMO負荷試験の値に一致した変動を示した.即ちTMO負荷試験により,急性および慢性肝障害や肝切除例における肝ミクロゾーム機能の診断が可能と思われる.またTMO負荷試験は肝ミクロゾーム機能を数量的にとらえる事が可能であり肝予備能の一つである肝ミクロゾーム機能の臨床的診断にも有用と思われる.

キーワード
肝切除, 肝予備能, 肝ミクロゾーム機能, トリメタジオン, チトクローム P450量

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