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日外会誌. 88(3): 283-293, 1981


原著

胃の腸上皮化生の発生,進展についての形態学的研究

東京大学 医学部第3外科

立野 一郎 , 大原 毅 , 近藤 芳夫

(昭和61年5月14日受付)

I.内容要旨
摘出胃標本77例について吉井のA法(alcianblue染色法)に稀塩酸分別を加えた方法で腸上皮化生を染色し,肉眼と実体顕微鏡観察により腸上皮化生の分布と肉眼形態について検討した.実体顕微鏡観察には従来の方法の他,臨界点乾燥法を応用した.また微小腸上皮化生巣の完全連続切片を作製し,粘膜内発生部位を観察した.以上の結果, 
1)77例中,71例(92.2%)で幽門腺領域,中間帯の両方に腸上皮化生が存在した.微小な腸上皮化生巣しか存在しなかつた19例中13例(68.5%)にやはりこの二領域で化生が存在した. 
2)中間帯前後壁では,ほとんど完全型腸上皮化生のみが存在する症例が91.7%(66/72)であり,一方幽門腺領域では,ほとんど不完全型の症例が31.6%,不完全型が優勢な症例が30.3%であつた. 
3)中間帯では,殆ど完全型腸上化生のみが存在する症例は,微小化生群19例中85.7%,広範化生群42例中97.6%で両群に差はなく,幽門腺領域でも両群の組織像に差はなかつた. 
4)腸上皮化生の肉眼形態は,幽門腺領域では隆起型の症例が多く,中間帯では陥凹型の症例が多かつた. 
5)臨界点乾燥法を応用した,alcianblue染色乾燥粘膜の実体顕微鏡観察では,幽門腺領域には胃小区に一致した班状隆起性腸上皮化性巣が多く,中間帯では,胃小区境界の溝状陥凹型に沿う網状の広がりを示すことが多かつた. 
6)微小な腸上皮化性巣しか認められない4症例から,中間帯,幽門腺領域各2コの粘膜片を取り,完全連続切片で観察した結果,中間帯では化性腺管は全て溝状陥凹の底部に発生しており,この他少数の“杯細胞化生”を認めた.一方幽門腺領域では化生巣は隆起または陥凹していたが,その他多数の“ 杯細胞化生”が粘膜平坦部に見られた.

キーワード
腸上皮化生, alcianblue 染色, 臨界点乾燥法, 実体顕微鏡, 杯細胞化生

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