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日外会誌. 88(3): 266-272, 1981


原著

体外循環中のエピネフリン,ノルエピネフリン変動
―とくに軽症群と重症群の対比を中心に―

都立広尾病院 心臓血管外科

紺野 進 , 前村 大成 , 後藤 一雄 , 八木 葉子 , 笹栗 志朗 , 丸山 俊之 , 田渕 典之

(昭和61年5月16日受付)

I.内容要旨
様々な重症度の心疾患38例に開心術を行い,体外循環(CPB)前から閉胸時までの7点において混合静脈血の血漿エピネフリン(E)およびノルエピネフリン(NE)を測定した.EおよびNEの変動において,ともに大動脈遮断解除の時点で著しく高いピーク値(Eで対照の13倍,NEで6倍)を示した.その後はともに減少し,閉胸時にはEは対照値近くまで低下したが,NEは軽度ないし中等度高値を持続した.NYHA分類I,II度の軽症群と,III,IV度の重症群と,術前からIABP作動下に開心術に移行したIABP群の3群に分けてこの変動を比較した.E変動では,軽症群で著しく高いピーク値で,重症群でそれより有意に低いピーク値で夫々推移したが,IABP群ではピーク値を作らず,終始低値のまま推移した.NE変動では,軽症群でむしろ低いピーク値で,重症群ではそれより有意に高いピーク値とCPB後半の中等度高値を示して推移し,IABP群ではピーク値を作らず,CPB後半の中等度高値が示された.CPB後,ドーパミンをほとんど使用しなかつたドーパミン非使用群10例と,ドーパミン10mcg/kg/min以上要したドーパミン使用群12例をとつてプロットし直した.軽症・重症群対比と基本的には差はなかつたが,ドーパミン使用群のNE変動は,大動脈遮断解除から閉胸にかけて中等度高値が持続し,ドーパミン非使用群が漸減するのと著しい対比を示した. 
軽症群ではEが主体になつて体外循環とくに大動脈遮断侵襲に対し反応したが,重症群およびドーパミン使用群ではEは早くから枯渇傾向を示し,代つてNEが代償性増加をきたしたことが示唆された.IABP群ではさらにこの傾向が顕著に示された.ドーパミン使用群のCPB後半のNE高値は,NEの代償性増加にドーパミン投与による間接的増加が加わつたものと考えられた.

キーワード
体外循環中のカテコールアミン, エピネフリン, ノルエピネフリン, エピネフリン枯渇現象, ノルエピネフリン代償性増加

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