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日外会誌. 88(3): 258-265, 1981


原著

転移リンパ節の肉眼的判定と組織学的判定の異同における問題点

鹿児島大学 医学部第1外科

夏越 祥次 , 愛甲 孝 , 四本 紘一 , 吉中 平次 , 島津 久明

(昭和61年5月21日受付)

I.内容要旨
転移リンパ節に対する肉眼的判定と組織学的判定の差異について,食道癌,胃癌,大腸癌,甲状腺癌,乳癌の治癒切除例で転移リンパ節個数が1症例あたり5個以下であつた444例を対象として検討した.臨床上の最も重要な問題として,肉眼的に転移陰性と判定した263例のうち組織学的転移陽性例が25例(9.5%)にみられた. 
肉眼的に転移陽性と判定し,初回の組織検査で転移なしとされた51例について長軸方向に平行な3箇所の亜連続切片を追加作製し,転移の有無を再検したところ8例(15%)に新たに転移が認められ,微小転移の存在,初回検索での見落し,包埋の問題が指摘された. 
リンパ節を1個ごとに包埋し,肉眼的判定と組織学的判定の1:1の対応が可能であつた食道癌24例,1,368個のリンパ節について肉眼的判定の精度をみると,sensitivity 72.2%,specificity 92.5%であつた.肉眼的判定と組織学的判定の差異をretrospectiveにリンパ節の病理組織学的形態より検討したところ,肉眼的に過大評価したリンパ節の背景因子としては,被膜の肥厚(31.5%),線維化(41.8%),炎症(15.4%),大きさ10mm以上(15.4%)などが考えられ,一方,過小評価したリンパ節では,転移面積30%以下(53.3%),大きさ5mm以下(46.7%)などの所見が技術面以外の因子として指摘された.

キーワード
リンパ節転移, 肉眼的転移判定, 組織学的転移判定, 微小転移

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