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日外会誌. 88(2): 231-238, 1987


症例報告

下大静脈を経て右心房・右心室に達する腫瘍栓塞を来たした副腎癌の 1 手術例

千葉大学 医学部第2外科
*) 国立千葉病院 心臓血管外科

岡住 慎一 , 浅野 武秀 , 竜 崇正 , 長島 通 , 小高 通夫 , 磯野 可一 , 西沢 直*)

(昭和61年4月23日受付)

I.内容要旨
下大静脈に進展し,右心房,右心室に達する腫瘍栓塞をきたした副腎癌に対し,開心下切除を施行し得たので,文献的考察を加え報告する.
症例は46歳男性で,腹部膨満,背部痛を主訴として来院.下大静脈より,右心房,右心室に達する腫瘍栓塞を形成した,内分泌非活性の右副腎腫瘍と診断した.切除可能と判断し,昭和59年5月18日手術施行.主腫瘍摘除の後,人工心肺下に開心術を施行し,右心房内および右心室内の腫瘍栓塞を摘除し得た.腫瘍の大きさは14×11×7cm,880gであり,腫瘍栓塞部は90g,病理診断は,sarcomatoid adrenocortical carcinomaであつた.術後3週間にて退院し,経過良好であつた.その後5ヵ月頃より,再発所見を認め,同年12月10日,術後第206日にて死亡した.
右心房,右心室に達する腫瘍栓塞を伴う腫瘍として,本邦では19例,外国では42例の臨床報告例を検索し得たが,腎癌,肝癌などの報告が主であり,うち副腎癌症例は米国での1例に次いで,本例が2例目であつた.右心房以上に達する腫瘍栓塞の摘除例は,うち31例報告されているが,本邦での摘除例は腎癌での1例をみるのみで本例を加え2例にすぎない.報告例の予後をみると,栓塞摘出施行例の生存率が,非摘出例と比較し良好であり,画像診断の進歩で的確な診断が可能となつた現在,積極的手術より,予後の向上をはかれると考える.

キーワード
非機能性副腎癌, 下大静脈内腫瘍栓塞, 人工心肺低体温使用下手術

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