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日外会誌. 88(2): 216-221, 1987


症例報告

急性電撃型の経過をたどつた高齢者全大腸炎型潰瘍性大腸炎の 1 治験例
―外科的治療に関する 1 考察―

野州病院 外科
*) 名古屋市立大学 医学部第1外科

村田 行孝 , 上岡 克彦 , 鈴木 達也 , 由良 二郎*) , 加藤 文彦*)

(昭和61年1月21日受付)

I.内容要旨
高齢での発症に加え,全大腸炎型でしかも急性電撃型の経過をたどり,steroid剤の投与による内科的治療に奏効せず,二期的な手術で救命しえた重症型潰瘍性大腸炎の1例を経験したので報告するとともに,本症例のごとく重症型の高齢者症例に対する外科治療につき考察した.
症例は75歳男性.高熱,腹痛および頻回の粘血性下痢便を主訴とし来院した.精査にて,全大腸・直腸に及ぶ急性電撃型,重症型の潰瘍性大腸炎と診断された.絶飲食,IVH下に強力な内科的治療を施行したが次第に自他覚所見の悪化がみられたため,緊急に回盲部腸瘻造設術を施行した.その後,toxic megacolonの消失ならびに臨床症状の軽度の改善がみられたが,steroid,salazopyrinの投与にもかかわらず緩解が得られないため,回盲部腸瘻造設後3週間目にtotal proctocolectomyおよびileostomyを施行し軽快せしめることができた.
潰瘍性大腸炎における高年齢発症者は,本邦では軽症でしかも病変範囲が狭い症例がほとんどで,予後良好のことが多いとされている.しかし,本症例のごとく高年齢での発症で,しかも全大腸炎型を呈し,急性電撃型の経過をたどつた重症症例では予後不良のことが多い.
このような症例における外科的治療の基本方針は,内科的治療に奏効しなければ速やかに外科的処置に委ねること,そして,まず,手術侵襲の少ない人工肛門の造設を行ない,全身状態の改善を待つて病変部をすべて除去する根治手術を行なうという二期的手術が妥当と思われる.

キーワード
潰瘍性大腸炎, 高齢者発症, toxic megacolon

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