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日外会誌. 88(2): 205-210, 1987


原著

下肢急性動脈血栓症例の検討

日本大学 医学部第2外科

尾碕 俊造 , 根岸 七雄 , 萩原 秀男 , 石井 良幸 , 新野 成隆 , 一和多 雅雄 , 瀬在 幸安

(昭和61年3月26日受付)

I.内容要旨
急性動脈閉塞症のうち下肢の急性血栓症例36例について検討を行なつた.原因となつた基礎疾患は閉塞性動脈硬化症(ASO)36例,閉塞性血栓血管炎(TSO)2例,動脈硬化性動脈瘤1例であつた.救肢率は56.0%である.このうち血行再建例のみについてみれぽ,65.0%である.死亡例は8例で死亡率は22%であつた.死因としてはMyonephropathic metabolic syndrome(MNMS)5例,敗血症2例,心不全1例であつた.これらの来院時の肢趾の所見で4段階に分けて評価した.
I度は軽度の虚血症状を認める状態で,II度はチアノーゼを伴う状態,III度は斑紋様チアノーゼに知覚鈍麻,不全麻痺が出現した状態で,IV度は筋硬直が起こり,壊疽が進行しつつある状態である.
I度,II度は治療成績は良好であるが,III度,IV度は重篤で,救肢率,死亡率ともに悪くなる.この分類は肢趾の予後評価に有用である.MNMSは7例に認められ,対象血栓症例中の発生率は19%であり全急性動脈閉塞症例中14例であつた.このMNMSの死亡率は約71%と高い.これらの経過からの検討では,虚血期にすでに,虚血代謝産物が発生しており,これが徐々に,あるいは急激に全身に広がるために種々の病態が出現するものである.対象例中の1例が分割血行再建によりMNMSを回避でき救肢,救命しえたことより,この血行再建法が1つの予防方法と考えられた.そしてこのような不完全な血行再建を開存させる方法として,持続動注による線溶療法の併用を応用し良好な成績を得た.この方法を来院時所見で重篤なIII度,IV度例に対して施行し,75%の救肢率で,肢趾切断率は25%の小切断のみであり有効な方法であるといえる.そしてこれを応用することにより二期的に完全血行再建を期待することが可能である.

キーワード
急性動脈血栓症, Myonephropathic metabolic syndrome, Revascularization phase, Devascularization phase, 持続線溶動注療法

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